中啓(読み)チュウケイ

デジタル大辞泉 「中啓」の意味・読み・例文・類語

ちゅう‐けい【中啓】

《「啓」は、ひらく意》扇の一種親骨の中ほどから外側へ反らし、畳んでも上半分半開になるように作られたもの。

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精選版 日本国語大辞典 「中啓」の意味・読み・例文・類語

ちゅう‐けい【中啓】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「啓」はひらくの意 ) 「末広(すえひろ)」の一種。先端が末広より狭く、親骨に彫りを加えないことを特色とするもの。親骨の上端を外側にそらせてあり、たたんでもなお頭部が半びらき(中啓)になっているところからの名称。主として僧侶宿老が用いた。浮折(うけおり)
    1. 中啓
      中啓
    2. [初出の実例]「児 一 着付箔長袴の下〈略〉黒骨中啓塗笠」(出典:虎寛本狂言・老武者(室町末‐近世初))

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改訂新版 世界大百科事典 「中啓」の意味・わかりやすい解説

中啓 (ちゅうけい)

扇の一種で末広(すえひろ),浮折(うけおり)などとも称する。啓は開くの意で,たたんでも頭部が半開きになっている形状からの名称。親骨に彫を加えないのを特色とし,本来は僧などが用いた。能楽ではシテ,ワキ,ツレ役などに多用され,黒骨のものは女,童(わらわ),武将,鬼などの役が,白骨のものは翁,尉(じよう),神,山伏などの役が使用する。色や絵柄は用途や流儀により異なるが,翁扇,尉扇,神扇,修羅(しゆら)扇,鬘(かつら)扇,狂女扇,天女扇,男扇,山伏扇,雲月(うんげつ)扇,善知鳥(うとう)扇,鬼扇,融(とおる)扇,童扇,乱(みだれ)扇などの区別がある。なお,ツマに近い雲形の部分が紅のものを爪紅,紺のものを爪紺と称する。爪紅は華やかな役柄,爪紺は老人などの役に使用される。

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百科事典マイペディア 「中啓」の意味・わかりやすい解説

中啓【ちゅうけい】

扇の一種。親骨の上部を外側にそらし,たたんだままでも半分開いたように見えるのでこの名がある。室町時代に考案され,近世には檜扇(ひおうぎ)の代りに儀式用に用いられた。先が広がっているので末広ともいい,末広は中啓の異称としてだけでなく,末を祝う心をこめているところから扇の総称ともなっている。
→関連項目

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