〈おとな〉とも発音され,前近代社会において集団の指導者をさす用語で,公家,武家,僧侶,商人,村人,町民の各組織には宿老がいた。とくに中世の都市や村落において共同体組織の中心的人物をさす用語としては著名で,1471年(文明3)の近江国菅浦荘の惣荘置文案に,時の宿老20人の署名がある。この宿老は菅浦荘を構成する上乙名,中老,末の若衆のうちの上乙名に該当し,〈おとな〉と通称されていた。狂言《末広がり》に〈上座にござるお宿老へ,末広がりを進上申そうと思うが〉とあり,参会した一族衆の中での宿老の立場が明確にされている。浄瑠璃《冥途の飛脚》に身請けされた女郎衆は親方(抱主)の承認をえて宿老(町年寄),月行事(月当番)の許可をもらい廓外に出されることが描かれているが,これは近世大都市の町内行政組織を示している。《日葡辞書》では宿老を〈としより〉とも呼んでいる。
→乙名(おとな) →年寄
執筆者:仲村 研
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元来は経験を積み、徳を備えた老人の意。鎌倉幕府の評定衆(ひょうじょうしゅう)や引付衆(ひきつけしゅう)に多く年功の者が任じられたところから彼らを宿老と呼称。室町幕府では評定衆、引付衆(内談衆)らの別称として用いられた。江戸幕府の老中も初期においては年寄衆とか宿老衆と呼称されることが多かった。また大名家の重臣、中世末期の郷村(ごうそん)の代表者や近世の町の名主(なぬし)・年寄役、鯨猟(くじらりょう)の勢子船(せこぶね)の指揮者などの称としても用いられた。
[松尾美恵子]
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…武家の家臣中での最高職。年寄,老中,宿老ともいう。家老の呼称は,《鎌倉年代記》や《永享記》にみえるのを早い例とする。…
…官位は四位少将ないし三位中将で老中よりも高く,老中と同道のときは1,2歩先を歩き,江戸城内では総下座の礼を受けた。 3代将軍家光のとき,1638年(寛永15),酒井忠勝,土井利勝が任じられたのが最初とされるが,家康の将軍就任以前では,石川数正,酒井忠次,井伊直政など軍事的に有能な大身の武将が徳川家の宿老として内外から重視されていた。家康が将軍となりその政治的権威が高まると,本多正信・正純父子などの側近が武将派を押さえて家老と呼ばれるようになった。…
…室町時代から,村・町・大名家・幕府などに見られる。室町幕府では宿老である評定衆に対して引付衆が中老と呼ばれていた。戦国大名武田氏にも中老の職があったことが《甲陽軍鑑》に見える。…
…本来年齢を重ねた人の意味であるが,転じて組織の中で経験豊富な指導者を意味し,年老,老人,宿老とも書かれ,〈おとな〉と発音される場合もある。室町幕府や江戸幕府,大名家では重臣を年寄,家老,老中と称している。…
…江戸幕府の職制。年寄,宿老,閣老,執政とも呼ばれ,全国を統治する徳川氏将軍家の〈老〉(としより,おとな)として,将軍に直属してその信任のもとに,所司代,三奉行,遠国奉行,大目付などを指揮して国政を統轄した(老中の〈中〉は〈連中〉〈若者中〉などというように集合を表し,また〈――衆〉のように敬意を表す機能をもつ)。また加判の列とも呼ばれたが,これは老中連署奉書(老中奉書)に署名し,判(花押)を加える者という意味である。…
※「宿老」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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