久布白落実(読み)クブシロ オチミ

20世紀日本人名事典 「久布白落実」の解説

久布白 落実
クブシロ オチミ

大正・昭和期のキリスト教婦人運動家,牧師 日本基督教婦人矯風会会頭。



生年
明治15(1882)年12月16日

没年
昭和47(1972)年10月23日

出生地
熊本県鹿本郡米之嶽村(現・鹿央町)

旧姓(旧名)
大久保 落実(オオクボ オチミ)

別名
別名=久布白 オチミ(クブシロ オチミ)

学歴〔年〕
女子学院〔明治36年〕卒

経歴
父・大久保真次郎は牧師、幼児洗礼を受ける。明治36年両親と共に渡米、太平洋神学校に学んだが、日本女性の売春宿を見て廃娼運動の緊要さを認識。43年牧師・久布白直勝と結婚、シアトルに住む。大正3年帰国して大阪・高知で伝道。5年東京に移り、日本基督教婦人嬌風会に総幹事として迎えられた。公娼廃止資金を集めるため5銭袋運動を始め、山室軍平らの廓清会と協力、各県を回り8年間で22県議会の廃娼決議を得た。また仏教界からも廃娼決議をとりつけた。さらに婦人参政権獲得運動にも参加。関東大震災では救援と復興に尽力吉原洲崎の遊廓再建に反対した。戦時中は医療施設として北京天橋愛隣館を開設。戦後21年の衆院選、22年、25年の参院選に出馬したが、いずれも落選。25年から「婦人と日本」を発行平和運動にも活躍した。31年に念願売春防止法が施行された。32年婦人代表団長として中国訪問。37年嬌風会会頭、41年日本基督教団正教師試験に合格、牧師となった。43年に第24回嬌風会世界大会を東京で開催。46年嬌風会名誉会頭。著書に「矢島楫子伝」、自伝「廃娼ひとすじ」などがある。

出典 日外アソシエーツ「20世紀日本人名事典」(2004年刊)20世紀日本人名事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「久布白落実」の意味・わかりやすい解説

久布白落実
くぶしろおちみ
(1882―1972)

キリスト教社会運動家。熊本県生まれ。父大久保真次郎(1855―1914)は牧師、母音羽(おとわ)は徳富蘇峰(とくとみそほう)の姉でクリスチャン。女子学院卒業後渡米、太平洋神学校に学ぶ。1910年(明治43)オークランドで牧師久布白直勝(なおかつ)(1879―1920)と結婚。滞米中、日本人女性の売春宿調査に従事する。大叔母で矯風会(きょうふうかい)会頭の矢島楫子(やじまかじこ)に同行し、ボストンの第7回矯風会世界大会に出席。帰国後、矯風会の中心にあって、廃娼(はいしょう)運動資金獲得のための募金活動「五銭袋運動」を発案実行し、さらに婦人参政権獲得運動にも参加した。第二次世界大戦後は混血児問題や売春防止法成立に力を注ぐほか、平和運動にも活躍した。

[北河賢三 2018年3月19日]

『自伝『廃娼ひとすじ』(1973・中央公論社/中公文庫)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「久布白落実」の意味・わかりやすい解説

久布白落実 (くぶしろおちみ)
生没年:1882-1972(明治15-昭和47)

婦人運動家。熊本県生れ。旧姓大久保。女子学院卒業後渡米し,日本人売春婦の実態調査に立ち会う。アメリカで神学生久布白直勝と結婚。帰国後の1916年日本基督教婦人矯風会総幹事に就任し,飛田遊廓新設反対など廃娼運動をすすめた。また,婦人参政権獲得期成同盟会の主力になるなど政治運動にも行動の幅を広げた。第2次大戦後も売春問題,混血児問題に尽力し,62年矯風会会頭。矢島楫子(かじこ)は大叔母,徳富蘇峰・蘆花兄弟は叔父にあたる。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「久布白落実」の意味・わかりやすい解説

久布白落実【くぶしろおちみ】

婦人運動家。熊本県生れ。旧姓大久保。徳富蘇峰・蘆花の姪。1903年女子学院卒。1910年牧師久布白直勝と結婚。大伯母で日本キリスト教婦人矯風会会頭矢島楫子(かじこ)の強い感化を受け,1916年同会総幹事に就任,大阪飛田(とびた)遊郭新設反対などの廃娼運動に取り組む。さらに1924年市川房枝らとともに婦人参政権獲得期成同盟会を結成,総務理事として活動。第2次大戦後は売春禁止法制定促進委員会の委員長となり,法制定に尽力した。→売春防止法

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「久布白落実」の解説

久布白落実 くぶしろ-おちみ

1882-1972 大正-昭和時代の女性運動家。
明治15年12月16日生まれ。大叔母(おば)矢島楫子(かじこ)の感化をうける。アメリカで牧師久布白直勝(なおかつ)と結婚。大正2年帰国後,廃娼(はいしょう)と婦人参政権の獲得に尽力。戦後売春防止法の成立につとめた。昭和47年10月23日死去。89歳。熊本県出身。女子学院卒。旧姓は大久保。著作に「廃娼ひとすじ」。

出典 講談社デジタル版 日本人名大辞典+Plusについて 情報 | 凡例

367日誕生日大事典 「久布白落実」の解説

久布白 落実 (くぶしろ おちみ)

生年月日:1882年12月16日
大正時代;昭和時代のキリスト教婦人運動家;牧師。日本基督教婦人矯風会会頭
1972年没

出典 日外アソシエーツ「367日誕生日大事典」367日誕生日大事典について 情報

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android