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乙名 おとな

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

乙名
おとな

長老の意で,ほかに大人,老人,宿老などの文字をあてる。最初は宮座長老をさしたが,室町時代以降,郷村制の発達につれて村落代表者,指導者をさすようになった。乙名は普通村落内の有力な名主層で,村,惣庄の代表として境争論,用水管理など村落の利害を代表し,また領主の年貢課役徴収の責任も負った。しかし戦国大名の領国制展開につれ,自治的な村落の代表者という性格は薄れ,領主の村落支配機構に組込まれていった。この名称は江戸時代にも引継がれ,町役人村役人の名称とした地方もある。なお蝦夷地の首長も乙名といい,また長崎には町年寄をさす乙名や出島を管理する出島乙名の語が用いられた。

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大辞林 第三版の解説

おとな【乙名】

〔「おとな(大人)」と同源〕
一族の長。家長。 「父はただ我を-にしすゑて/更級」
宮中に仕える女房のかしら。長老格の女房。 「さやうのことは所の-などになりぬれば/枕草子 158
武家の家臣のかしらとなる人物。家老・年寄の類。 「よき人物なれば、これを-になし申すべし/御伽草子・猿源氏」
中世末期、村落の代表者。もと宮座の指導層をさしたが、村落の自治組織の発達につれ、名主層から選ばれて、村落の利害を代表した。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

乙名
おとな

一般的には一族・集団のおもだった者をさすが、歴史的には室町・戦国期の村落指導者をさす名称である。大人、年老、宿老、長などと書かれる場合もある。本来は宮座において最高の年齢や地位の者をさしたが、中世村落では宮座の有力者が村落の指導者となることが多く、室町時代になって惣(そう)的結合が発展すると、広くその指導者の呼称とされるようになった。宮座において乙名になるのには一定の家格と年齢、財産が必要とされ、「おとな成(なり)」の儀式を経なければならなかった。乙名の人数は各村落で異なっていたが、1461年(寛正2)の近江(おうみ)国菅浦荘(すがうらのしょう)(滋賀県長浜(ながはま)市西浅井町菅浦(にしあざいちょうすがうら))では、上(うえの)20人乙名、次中(つぎのちゅう)乙名、末(すえ)の若衆という組織があったことが知られ、また山城(やましろ)国山科(やましな)七郷(京都市山科区)では各郷に年老、中(ちゅうろう)、若衆がいた。乙名層は、村落の指導者として農民の抵抗や闘争を組織したが、一方では最下層の荘官として、年貢、公事(くじ)の徴収実務にあたることもあった。[黒川直則]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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