乳房パジェット病(読み)にゅうぼうぱじぇっとびょう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「乳房パジェット病」の意味・わかりやすい解説

乳房パジェット病
にゅうぼうぱじぇっとびょう

三つに大別される乳がん組織型分類の一つ(「非浸潤がん」「浸潤がん」「パジェット病」)。

 乳がんは乳房内の乳腺(せん)に発生するが、そこに生じた腺がん細胞が主乳管を経由して乳頭・乳輪の表皮内に進展し、乳頭表皮に境界明瞭(めいりょう)な赤いびらん病変(ただれ)を形成する。出血を伴ったり、痂皮(かひ)化(かさぶた化)したりすることもある。発症は乳がん全体の1%未満ときわめてまれながんである。通常、しこりを触れず、片側の乳房にのみ発症することが多い。

 日本乳癌(がん)学会による「乳癌取扱い規約」ではステージ0に分類されるごく早期の乳がんで、予後は比較的良好である。他の組織型の乳がんに比べて高齢発症を特徴とし、湿疹と誤診されることも多いが、ステロイド外用薬に反応しない点などから鑑別される。治療乳房温存手術あるいは乳房温存手術センチネルリンパ節生検を組み合わせた術式が一般的だが、病変が大きければ乳房切除術が必要になる場合もある。リンパ節転移があるなど、進行した状態で診断された場合の治療は乳がんと同様の方針がとられる。

 陰部腋窩(えきか)、肛門(こうもん)部などに生じる乳房外パジェット病もある。パジェット病は皮膚がん一種にも区分されるが、治療は乳がんに準じる。

[渡邊清高 2019年10月18日]

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家庭医学館 「乳房パジェット病」の解説

にゅうぼうぱじぇっとびょう【乳房パジェット病】

 乳房パジェット(ページェット)病は、乳頭(にゅうとう)・乳輪(にゅうりん)にびらん(ただれ)をともなう湿疹(しっしん)ができる乳がんの特殊な型で、乳がん全体の1~2%というまれな病気です。
 発病年齢は乳がんよりやや高く、50歳代にもっとも多くみられ、ついで60歳代、40歳代と続きます。
 初期症状は多くの場合、乳頭やその周囲に、境界が比較的はっきりした軽い紅色や紅褐色の湿疹のようなものができることで始まることが多く、そのほとんどに軽いかゆみをともないます。ときには、かゆみだけで、皮膚の変化がみつからないこともありますので、注意が必要です。
 進行すると、乳頭はしだいに変形し、乳輪も不明瞭になります。さらに進行拡大すると、乳房全体が紅色の湿疹や、ジメジメしたただれなどでおおわれるまでになります。
 初めは、乳頭・乳輪の急性湿疹やたむし(頑癬(がんせん)(「股部白癬(頑癬/いんきんたむし)」))などとまちがえられやすいので、長期間治療しても症状の改善がみられないときや、かさぶたなどができるようなことがあったら、皮膚科の医師や、乳腺(にゅうせん)専門の医師にみてもらいましょう。
 診断は、顕微鏡による乳頭分泌物(にゅうとうぶんぴつぶつ)やかさぶたなどの皮膚の細胞診断が決め手となりますが、マンモグラフィーや超音波検査は、あまり有効ではありません。
 治療は、原則として手術による切除ですが、通常の乳がんに準じて行なわれます。
 手術以外の治療法としては、放射線療法、抗がん剤などの局所注射療法、レーザー光線による焼灼(しょうしゃく)療法、液体窒素(えきたいちっそ)を用いた凍結療法などがあります。また最近では、インターフェロン療法などの特殊な免疫療法も行なわれています。

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