事業者団体(読み)じぎょうしゃだんたい

精選版 日本国語大辞典 「事業者団体」の意味・読み・例文・類語

じぎょうしゃ‐だんたいジゲフ‥【事業者団体】

  1. 〘 名詞 〙 事業者が業種別に結成する団体、またはその連合体。
    1. [初出の実例]「その商品を生産する事業者又はその事業者を構成員とする事業者団体〈略〉が」(出典:私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(1947)二四条の三)

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改訂新版 世界大百科事典 「事業者団体」の意味・わかりやすい解説

事業者団体 (じぎょうしゃだんたい)

1948年に制定された事業者団体法によって創始された用語であり,アメリカのトレード・アソシエーションtrade associationに相当する。独占禁止法(1953年の改正の際,事業者団体法を吸収した)によれば,事業者団体とは,(1)主たる目的は事業者としての共通利益増進,(2)二つ以上の事業者の結合体,またはその連合体,(3)資本または構成事業者の出資を有しない,(4)営利を目的とする事業を営まない,の要件を充足するものをいう。事業者団体は,構成員の産業の種別により二つに大別できる。(1)同一産業の企業を構成員とする団体 全国規模の団体(日本鉄鋼連盟石油連盟等)と,地方的な規模の団体(県単位の理容組合,クリーニング組合等)に分けられる。(2)構成員の種別を問わない団体 これも広域的な経済団体連合会,日本経営者団体連盟等(〈経営者団体〉の項目参照)と,一定の地域に所在する企業からなる商工会議所,商店街組合等に分けられる。事業者団体の機能は,参加事業者の親睦からカルテル活動まで多岐にわたるが,おもなものは,(1)情報活動(事業の宣伝統計の整備等),(2)政治活動(選挙資金集め,業界に利害関係のある法令の制定・改廃についての影響力の行使等),(3)経営効率化活動(生産物の規格化,経営や技術の指導,共同保険等),(4)競争制限活動(生産制限,共同販売等)である。

 日本の近代的な事業者団体の発生は1880年(明治13)の製紙所連合会(現,日本製紙連合会),82年の紡績連合会(現,日本紡績協会)である。当時の事業者団体の主目的は職工争奪の防止等,同業者の協調にあったが,92年には紡績連合会が生産制限を実施しており,カルテル活動が早くもみられる。また法的整備の面では,1884年の同業組合準則,90年の産業組合法の制定により中小企業者の組織化が図られるとともに,同年の商業会議所条例,97年の重要輸出品同業組合法の制定により大企業者の組織化が図られた。その後,第1次大戦後の恐慌のもとで生産制限の色彩が濃い重要産業統制法が1931年に制定された。さらに38年の国家総動員法に基づいて41年重要産業団体令が制定され,やがて戦時体制のもとで事業者団体は国家による産業統制の下部機構となった。第2次大戦後には,統制団体の解散,その根拠法規の改廃が行われ,それとともに47年の独占禁止法,48年の事業者団体法の制定により私的統制団体の禁止,事業者団体の規制が行われた。
執筆者:

同業者団体については,すでに,アダム・スミスがカルテルの温床となる危険性を指摘しているが,今日,事業者団体は,アダム・スミスが指摘したような競争制限性を有すると同時に,中小企業が独自の能力では行えないような情報収集活動をなして,中小企業と大企業との格差を埋める等々の競争促進的な機能をも果たしている。

 それゆえ,現在の独占禁止法は,事業者団体の存在を否定的に評価せず,その反競争的な活動のみを規制することとしている。歴史的には,占領軍が,各種事業者団体を中心とする統制会等の解散を行い,1947年制定の独占禁止法も,私的統制団体禁止の規定を設けた。さらに総司令部の指示によって,アメリカでのアンチ・トラスト法の運用を踏まえた事業者団体法が48年に成立し,同法は,事業者団体の競争制限行為のみならず,自然科学に関する研究実施施設の所有経営等の直接に競争制限性を持たない行為をも,事業者団体が組織的に行う場合には,競争条件に悪影響を及ぼす可能性があるとして禁止していた。その後,53年の独占禁止法改正時に,事業者団体法を廃止し,独占禁止法8条で事業者団体を公正取引委員会に届け出させるとともに,事業者団体が行うカルテル行為,事業者数の制限,構成事業者の機能・活動の制限,事業者に〈不公正な取引方法〉に該当する行為をするように働きかけることを禁じた。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「事業者団体」の意味・わかりやすい解説

事業者団体
じぎょうしゃだんたい
trade association

◯◯工業会、□□連盟のように業種別に企業を結合した横断的組織。活動内容は、対内的と対外的に二大分される。対内的活動は、業界の需給動向その他の調査、情報交換、教育、調整などである。対外的活動は、国会・行政官庁に対する陳情・請願・要望、社会一般に対する広報・宣伝・協力(寄付など)、関連業界との連絡・協調、外国の同種組織との交流などである。独占禁止法により、競争の制限や阻害になるカルテル行為はできない。しかし、この種の疑惑が少なくないので、公正取引委員会は、1979年(昭和54)7月、事業者団体の活動に関する指針を発表した。それによれば、(1)最低販売価格等の決定、(2)標準価格等の決定、(3)共通の価格算定方式の設定、(4)割戻し(リベート)、値引き等の限度の決定、(5)価格、手数料等の団体交渉による決定、(6)安売り業者の排除、(7)再販売価格の維持、などは独占禁止法違反になる。

[森本三男]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「事業者団体」の意味・わかりやすい解説

事業者団体
じぎょうしゃだんたい

事業者としての共通の利益を増進することを主たる目的とする2つ以上の事業者の結合体,またはその連合体 (独占禁止法2条2項) をいう。事業者団体がカルテルの場となりやすいことからその行為について制限規定が設けられており,また公正取引委員会にその設立を届け出なければならない (8条) 。

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