六訂版 家庭医学大全科 「二次性貧血」の解説
二次性貧血
にじせいひんけつ
Secondary anemia
(血液・造血器の病気)
どんな病気か
血液疾患以外の基礎疾患が原因で起こる貧血を、二次性貧血と呼びます。主な原因としては感染症、
高齢者でみられる軽度から中等度の貧血は大部分が二次性貧血で、消化器系の悪性腫瘍が基礎疾患であることが多いので注意が必要です。
原因は何か
①慢性疾患に伴う貧血
膠原病(慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデスなど)に伴う慢性炎症や慢性感染症(
貧血の程度は軽度から中等度で、ゆっくりと進行するため
なお、全身性エリテマトーデス(SLE)では、溶血性(ようけつせい)貧血を発症することがあります。
②腎疾患に伴う貧血(
赤血球の造血を刺激する液性因子エリスロポエチンは、腎臓でつくられています。
③肝疾患に伴う貧血
④内分泌疾患に伴う貧血
⑤悪性腫瘍に伴う貧血
原因はさまざまで、出血、二次感染、吸収障害、骨髄転移による造血抑制、腎障害、抗がん薬による骨髄抑制(骨髄にある造血細胞が障害され、減ってしまうこと)などが複雑に関係しています。
症状の現れ方
二次性貧血に特有の症状はありません。一般的な貧血症状(
検査と診断
スクリーニング検査として血液検査や生化学検査を行います。多くの場合は、血液検査で正球性~小球性貧血がみられます。小球性貧血の場合は鉄欠乏性貧血との区別(表8)が必要なので、さらに血清鉄(低下)、総鉄結合能(低下)、血清フェリチン(正常~増加)を調べます。
がんに伴う二次性貧血では、がん細胞が骨髄に転移すると骨髄と末梢血のバリアが破壊され、未熟な白血球や
スクリーニング検査(腎機能検査、肝機能検査)の結果と臨床症状から基礎疾患を推定し、必要に応じて内分泌検査や自己抗体などの二次検査を行い、診断を確定します。
腎性貧血が疑われる場合は、エリスロポエチン濃度を測定し、貧血があるにもかかわらずエリスロポエチンの上昇がみられないことを確認します。
なお、基礎疾患がはっきりしない場合は血液疾患(とくに骨髄異形成(こつずいいけいせい)症候群)と区別するために骨髄穿刺などを行う必要があります。
治療の方法
治療の原則は基礎疾患の治療で、腎性貧血以外は貧血そのものに対する治療法はありません。鉄や葉酸、ビタミンB12の欠乏などが合併している場合は補給します。
腎性貧血は、エリスロポエチンの投与(静脈内注射または皮下注射)により、ほとんどの患者さんの貧血は改善されます。ただし、血圧上昇、高血圧性脳症、
病気に気づいたらどうする
基礎疾患がわかっている場合は、それぞれの疾患の専門医の診察が必要です。基礎疾患がわからない二次性貧血の場合は、血液疾患と鑑別するために血液内科の受診が必要です。なお、高齢者の場合は、消化器系の悪性腫瘍が基礎疾患であることが多いので注意が必要です。
関連項目
膠原病、慢性腎不全、肝硬変、甲状腺機能低下症、副腎皮質機能低下症、下垂体機能低下症
日野 雅之
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報