二酸化炭素中毒

内科学 第10版 「二酸化炭素中毒」の解説

二酸化炭素(CS2)中毒(ガス・その他の工業中毒)

(2)二硫化炭素(CS2中毒
 おもにセロファンレーヨンの製造過程で用いられる液体であるが,加硫中に発生する高濃度の二硫化炭素を含んだガスが経気道や経皮的に体内に入り,心臓血管系や神経系を障害する.脳は萎縮し,二次性の血管障害による散在性の壊死巣を認める.末梢神経では,軸索障害と髄鞘消失を認める.また蝸牛有毛細胞を障害し難聴を生じる.
 急性・亜急性の高濃度暴露では,全身倦怠,頭痛不眠,意欲低下,躁うつ,視覚障害,聴覚障害,パーキンソニズム昏睡を認め,ときに呼吸麻痺で死亡する.慢性の低濃度暴露では,暴露後数カ月から数年経って末梢神経障害をきたし,感覚障害に続いて,筋痛,四肢遠位部優位の筋力低下を認める.高度暴露では視神経などの脳神経も障害される.神経症状は発症後1~2年は変動するが,徐々に回復する.長期間(10~30年)の暴露では血管傷害による動脈粥状硬化症,腎硬化症,脳血管傷害を生じる.治療は100%O2,チオ硫酸ナトリウムやグルコン酸カルシウム投与する.[熊本俊秀]
■文献
Harris J, Chimelli L, et al: Nutritional deficiencies, metabolic disorder and toxins affecting the nervous system. In: Greenfield’s Neuropathology, 8th ed (Love S, Louis DN, et al eds), pp 675-731, Hodder Arnold, London, 2008.上條吉人:臨床中毒学(相馬一亥監修),医学書院,東京,2009.Prockop LD, Rowland LP: Occupational and environmental neurotoxicology. In: Merritt’s Neurology, 11th ed (Rowland LP ed), pp1173-1184, Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, 2005.

二酸化炭素中毒(有機物質中毒)

(3)二硫化炭素中毒(carbon disulfide poisoning)
定義・概念
 レーヨンおよびセロファン製造で溶剤として使用され,蒸気吸入による中毒が多い.
臨床症状
 急性中毒では頭痛,興奮,失調性歩行,四肢麻痺痙攣,意識障害などをきたし,慢性中毒ではポリニューロパチー,網膜症,脳血管障害などを呈する.
治療
 急性期には必要に応じて酸素吸入,人工呼吸,輸液(10%チオ硫酸ナトリウムおよび10%グルコン酸カルシウムの投与)を行う.[内野 誠]

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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