同一音節内で音価が変化する母音を複合母音といい、そのうちでも特に変化が二音間に生ずるものを二重母音という。このように二重母音は、2種の母音が同一音節に属するところから、音節の頂点形成機能上、一方が音節主音、他方が音節副音という形で、互いに主従関係をなすことになる。たとえば英語の‘I’[a]では、それぞれ[a]が主音、[]が副音となり、IPA(国際音声字母)では音節副音部に補助記号[˘]を付すことになっている。
また、前述の‘I’のように、「聴こえ」が漸次減少するタイプを降り二重母音、逆に中国語の光[kɑŋ]のように「聴こえ」が漸次増大するタイプを昇り二重母音、さらに二音間に「聴こえ」の大小差を認めがたいタイプを平ら二重母音と称して、下位区分することがある。なお、英語学では、「聴こえ」でなく、舌の高さを基準としてこれを評価するため、前述の「昇り二重母音」を「下方向二重母音」、「降り二重母音」を「上方向二重母音」と称する。しかしこの呼称は、基本的な評価基準そのものに難点があるのみならず、いたずらに初学者を混乱させる点でも首肯しがたい。
世界の言語を音韻的側面から類型化する際にも、二重母音化を好む傾向性を有するか否かは興味ある結果をもたらす。たとえば、日本語やフランス語の母音は、α+β>γ式の変化を遂げてきたという通時的特徴があり、この点で、二重母音化を遂げてきた英語とは、決定的に袂(たもと)を分かつことになる。
[城生佰太郎]
『城生佰太郎著、金田一春彦監修『音声学』(1982・アポロン音楽工業社)』
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…cart[kːt]〈車〉。(7)二重母音 舌がある母音から出発し他の母音へ向かって移動しながら1音節を構成するものを二重母音diphthongという。例えば,英語のI[a]〈私〉では,舌が[a]の構えから高母音[]へ向かって移っていくが,[]の手前で調音を終えてしまう(図10参照)。…
…フランス語のpaix[pɛ]〈平和〉の[ɛ]は口母音であるが,pain[p]〈パン〉の[]は鼻母音である。また,舌が低母音[a]の構えから出発して低め高母音の[]へ向かって移動するとき二重母音[a]が出る。このように連続した母音において舌の位置が変化するものを二重母音という。…
※「二重母音」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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