江戸後期の歌人。通称元真。家号は歌堂(かどう)。文雄は法号。田安(たやす)家侍医。岸本由豆流(きしもとゆずる)に国学を学び、のち一柳千古(いちやなぎちふる)門。江戸に居住し、歌人としてたつ。歌論に『伊勢(いせ)の家づと』(1864)などがある。『万葉集』を理想とする賀茂真淵(かもまぶち)の説に反対し、『古今集』を尊ぶ香川景樹(かがわかげき)説を支持。江戸派の系統に属する。歌集『調鶴集(ちょうかくしゅう)』(1868)は短歌917首、連歌2首、長歌5首を収録。「さくらちり鈴菜こぼるる田舎道これより春も暮れてゆくらむ」などの写実的な歌がある。明治4年11月没。墓所は東京・谷中(やなか)の玉林寺にある。
[辻森秀英]
『辻森秀英著『近世後期歌壇の研究』(1978・桜楓社)』
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
(久保田啓一)
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