井上日召(読み)イノウエニッショウ

デジタル大辞泉 「井上日召」の意味・読み・例文・類語

いのうえ‐にっしょう〔ゐのうへニツセウ〕【井上日召】

[1886~1967]国家主義者群馬の生まれ。本名、昭。日蓮宗帰依し、日召と号す。血盟団結成、国家革新を計画し、一人一殺いちにんいっさつ主義を唱え、井上準之助団琢磨暗殺裁判無期懲役となったが、恩赦出獄。第二次大戦後護国団設立

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精選版 日本国語大辞典 「井上日召」の意味・読み・例文・類語

いのうえ‐にっしょう【井上日召】

  1. 国家主義者。群馬県出身。本名は昭。日蓮宗に帰依し日召と号し、茨城県に立正護国堂を建て国家革新運動を提唱。井上準之助、団琢磨を暗殺した血盟団事件を指揮した。明治一九~昭和四二年(一八八六‐一九六七

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「井上日召」の意味・わかりやすい解説

井上日召
いのうえにっしょう
(1886―1967)

右翼テロリスト集団の指導者。本名昭。群馬県に生まれる。前橋中学卒業後、ボーイ見習、臨時職工、代用教員を経て、さらに早稲田(わせだ)大学、東洋協会専門学校中退後、1910年(明治43)満州(中国東北)に渡り、陸軍の諜報(ちょうほう)活動に従事するなど大陸を転々とし、21年(大正10)帰国。その後日蓮(にちれん)宗に帰依(きえ)し、24年日召を名のる。26年右翼団体建国会に入ったが、まもなく脱会。27年(昭和2)から茨城県大洗(おおあらい)の立正護国堂に住み、日蓮宗と国家主義による農村青年の育成にあたる。海軍青年将校とも結び、武力による国家改造を目ざすようになった。32年には血盟団を組織して「一人一殺主義」により暗殺を計画、配下小沼正(おぬましょう)に元蔵相井上準之助を、菱沼(ひしぬま)五郎に三井合名理事長団琢磨(だんたくま)を殺害させた(血盟団事件)。自首し、34年無期懲役の判決を受けるが、減刑、大赦により40年に出獄。翌41年近衛文麿(このえふみまろ)に接近、相談役を務めた。第二次世界大戦後は48年(昭和23)公職追放。54年に護国団を創立し団長に就任するが翌年辞任、隠退した。

[北河賢三]

『『日召自伝』(1947・日本週報社)』『『炎の求道者 井上日召獄中日記』上下(1978、79・毎日新聞社)』

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20世紀日本人名事典 「井上日召」の解説

井上 日召
イノウエ ニッショウ

明治〜昭和期の国家主義者,右翼活動家 血盟団指導者。



生年
明治19(1886)年4月12日

没年
昭和42(1967)年3月4日

出生地
群馬県川場村

本名
井上 昭

別名
号=日象

学歴〔年〕
東洋協会専門学校(現・拓殖大)中退

経歴
明治43年満州に渡り、満鉄に勤務しながら参謀本部の諜報活動に従事。中国各地を歩き、第1次大戦中、ドイツ領の青島に潜入して功績を上げた。大正10年帰国、日蓮宗に帰依し、国家革新運動に走り、上杉慎吉の建国会に入ったりしたが、昭和3年茨城県大洗の立正護国堂にこもって禅を修行。藤井斉をリーダーとする海軍の革新将校橘孝三郎らと知り、5年藤井の依頼で西田税らと郷士会を結成。6年陸軍のクーデター計画3月事件、10月事件が未発に終わり、7年一人一殺の血盟団を結成。同年2月9日小沼正が前蔵相井上準之助を射殺、3月5日には菱沼五郎が三井合名理事長の團琢磨を暗殺、井上は自首、無期懲役となったが15年出獄。翌16年三上卓、四元義隆らと「ひもろぎ塾」を設立。戦後29年に護国団を創立、団長。著書に獄中手記「梅の実」がある。

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改訂新版 世界大百科事典 「井上日召」の意味・わかりやすい解説

井上日召 (いのうえにっしょう)
生没年:1886-1967(明治19-昭和42)

国家主義者,血盟団の指導者。群馬県出身。本名昭。東洋協会専門学校(現,拓殖大学)中退。中国で放浪生活を続けた後,日蓮宗に帰依して日召と号す。1924年ごろから社会改革を行う決意を固め,28年茨城県に設立した立正護国堂で小沼正,菱沼五郎ら近村青年を指導した。30年には霞ヶ浦海軍飛行学校の藤井斉ら海軍青年将校と提携して非合法運動に路線転換する一方,陸軍青年将校の一派とも結んだ。十月事件計画に加わったが,これが露呈した後は藤井らと独自に軍部のクーデタを誘発する目的で要人暗殺を計画した。これが翌32年の血盟団事件と五・一五事件を生んだ。血盟団事件で無期懲役の判決を受けたが,40年減刑され出所した。戦後は54年佐郷屋留雄(嘉昭)らと護国団を設立した。
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百科事典マイペディア 「井上日召」の意味・わかりやすい解説

井上日召【いのうえにっしょう】

日蓮宗僧侶(そうりょ)で国家主義者。本名昭(あきら)。東洋協会専門学校(現,拓殖大学)中退。1930年右翼団体血盟団を組織,一人一殺を唱え,テロ活動を指導,団琢磨,井上準之助暗殺事件(血盟団事件),五・一五事件などを生んだ。血盟団事件で無期懲役。1940年減刑出所。第2次大戦後の1954年には護国団を設立。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「井上日召」の解説

井上日召
いのうえにっしょう

1886.4.12~1967.3.4

昭和期の国家主義者。群馬県出身。早大・東洋協会専門学校中退後,1910年(明治43)中国に渡り参謀本部の諜報活動に加わる。のち茨城県大洗海岸の立正護国堂にこもり,暴力による国家革新運動を企図。32年(昭和7)5・15事件の先駆けとして小沼正(おぬましょう)・菱沼五郎を指揮して井上準之助と団琢磨(たくま)を暗殺させた(血盟団事件)。無期懲役となるが,40年に仮出所。第2次大戦後は54年に護国団を結成し,講演活動を行う。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「井上日召」の解説

井上日召 いのうえ-にっしょう

1886-1967 明治-昭和時代の国家主義者。
明治19年4月12日生まれ。日蓮宗を信奉,昭和4年から茨城県大洗で青年を教育した。のち血盟団を組織して一人一殺をとなえ,7年井上準之助,団琢磨(たくま)の暗殺(血盟団事件)を指導。無期懲役となったが15年出獄。29年大日本護国団を結成した。昭和42年3月4日死去。80歳。群馬県出身。東洋協会専門学校(現拓殖大)中退。本名は昭。著作に「日本精神に生よ」など。

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旺文社日本史事典 三訂版 「井上日召」の解説

井上日召
いのうえにっしょう

1886〜1967
昭和初期の国家主義者。血盟団の盟主
群馬県の生まれ。中国大陸を転々としたのち帰国。日蓮宗に帰依し,1928年以来茨城県大洗の立正護国堂で農村青年に国家主義を説き,水戸愛郷塾の橘孝三郎と結ぶ。血盟団を組織して「一人一殺主義」を唱え,財界・政界の要人を暗殺して軍部による国家改造を行おうとし,五・一五事件の先駆をなした。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「井上日召」の意味・わかりやすい解説

井上日召
いのうえにっしょう

[生]1886. 群馬
[没]1967.3.7.
国家主義者。本名昭。血盟団を組織,1人1殺のテロを指導。血盟団事件により,1934年無期懲役確定,1940年恩赦で出獄。

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367日誕生日大事典 「井上日召」の解説

井上 日召 (いのうえ にっしょう)

生年月日:1886年4月12日
明治時代-昭和時代の国家主義者
1967年没

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世界大百科事典(旧版)内の井上日召の言及

【小沼正】より

…尋常小学校高等科卒業後,大工の徒弟,上京して染物店,製菓工場などで働くうちに資本主義と左翼とに反発を抱く。1930年,小学校訓導古内栄司らの勧誘により日蓮宗信者となり,井上日召の影響をうけて,政財界要人の暗殺により〈国家改造〉の“捨石”たらんとする〈血盟団〉に参加。1932年2月9日,井上準之助前蔵相を拳銃で殺害(血盟団事件)。…

【血盟団事件】より

井上日召を盟主とする一団によるファッショ的〈国家改造〉をめざすテロ事件。1932年2月9日,前大蔵大臣井上準之助が,3月5日には三井合名理事長団琢磨が,それぞれ小沼正,菱沼五郎によってピストルで射殺され,犯人逮捕から,政財界要人20余人の暗殺計画が明らかになった。…

【五・一五事件】より

…1931年十月事件が不発に終わったのち,橋本欣五郎中佐ら幕僚将校は地方や外国に転勤させられ,幕僚将校に反感をもった隊付青年将校らは,荒木貞夫陸相のもとで国家改造が実現できるものと期待し,直接行動から離れていった。これに対して井上日召一派と藤井斉中尉ら海軍急進派青年将校は国家改造のための決起に固執し,はじめは32年2月11日の紀元節を期して政財界の要人を暗殺することを計画した。しかし上海事変が発生し藤井らが出征したため,まず井上一派が第1陣として〈一人一殺〉の要人暗殺を引き受け,血盟団事件をおこした。…

※「井上日召」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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