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空間的に異なる位置に二つの対象が短い時間間隔で提示されると、一方の対象から他の対象への運動がみられる。仮現運動の一般的な例は映画である。
[今井省吾]
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…プラハ生れのドイツの心理学者で,ゲシュタルト心理学の創始者。ベルリン,ビュルツブルクの各大学で学んだ後,フランクフルト大学で仮現運動の知覚実験を行い,その成果を《運動視に関する実験的研究》(1912)として発表。以後,雑誌《心理学研究》を創刊し,ゲシュタルト心理学の発展に力を注いだ。…
…(2)明るさ,色の対比などに関しては,白,黄,緑のものは黒,赤,青のものより大きく見え(〈放散による錯視〉),色の色調や明るさは類似色が近くにあるときはいっそう似た色調や明るさに見え(〈同化による錯視〉),補色が近くにあるときはより際立って見える(〈対比による錯視〉)。(3)物の運動に関する錯視としては,風が速く流れる夜空で月が雲の間を速く走って見えるように,あるものが動くと静止しているものが動いて見える〈誘導運動の錯視〉と,映画の原理のように,刺激を空間内の異なる位置に断続的に提示すると,その刺激が初めの位置から動いたように見える〈仮現運動の錯視〉がある。(4)〈幾何学的錯視〉といわれるものは,物の大きさ(長さ,広さ),方向,角度,形などの平面図形の性質が周囲の線や形などの関係のもとで実際とは違って見えるものである(図)。…
…しかしM.ウェルトハイマーやW.ケーラーなどゲシュタルト心理学の人々は,知覚を要素的な感覚に分けることは不可能で,むしろ直接的に意識にのぼるのはつねに,あるまとまった知覚であると考えた。例えばウェルトハイマーが1912年に発見した仮現運動の場合は,少し離れた2個の光点が順番に提示されると,静止した別々の光点には見えず一つの光点が動いているという運動印象だけが得られる。ケーラーは,あらゆる知覚現象には必ずそれに対応する脳の生理的過程があるという心理物理同型論psychophysical isomorphismの立場から,仮現運動が実際の運動と等しい生理過程を大脳皮質にひき起こすのであろうと考えた。…
※「仮現運動」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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