仮面の告白(読み)カメンノコクハク

デジタル大辞泉 「仮面の告白」の意味・読み・例文・類語

かめんのこくはく【仮面の告白】

三島由紀夫小説同性にしか性的な欲望を抱くことができない「私」が自身半生を語る自伝的長編。昭和24年(1949)刊行。著者初期代表作

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改訂新版 世界大百科事典 「仮面の告白」の意味・わかりやすい解説

仮面の告白 (かめんのこくはく)

三島由紀夫長編小説。1949年(昭和24)に書下ろしで河出書房から刊行。作中の〈私〉の幼時から青年期までを,〈性〉の意識を中心にえがいた作品。聖セバスチャンの殉教図を見て,性的興奮をおぼえた〈私〉は,やがて自分が男色の傾向を持つことを意識する。愛情を感じていた女性・園子は他の男と結婚してしまう。主人公の性的異常は,時代に和合できない孤独を象徴している一面がある。全編が知的な散文で書かれながらも抒情性が感じられ,三島の初期の代表作。なお〈仮面告白〉とは,小説の方法意識としては〈素顔の告白〉というべき私小説に対立し,小説を〈虚構〉とみる文学観の表明でもある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「仮面の告白」の意味・わかりやすい解説

仮面の告白
かめんのこくはく

三島由紀夫の小説。1949年(昭和24)河出書房刊。作者自身と思われる「私」の成長を、性的な側面を中心にして青年期までたどったもの。男性に性的欲望を覚える「私」は、やがて友人の妹園子に恋するが、彼女は他の男と結婚し、のちに「私」と巡り会う。しかし「私」は彼女と結び付くことがない。性的異常者の告白の形をとりながら、知的に洗練された文体によって一青年の孤立を浮き彫りにしている。題名の「仮面の告白」とは私小説を「素顔の告白」とみた場合の、方法化された告白と解される。ヨーロッパ的な知的造形力を感じさせるこの小説は、三島の初期の代表作として知られる。

[磯田光一]

『『仮面の告白』(新潮文庫)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「仮面の告白」の意味・わかりやすい解説

仮面の告白
かめんのこくはく

三島由紀夫の長編小説。 1949年発表。上流階級の孤独のなかで幼少期をおくった「私」は,早くから同性愛的傾向を自覚し,友人の妹園子との愛も結局は不可能であった。敗戦後の晩夏のある日,猥雑なダンスホールで「私」は園子に再会し,彼女と踊る野蛮な青年の汗に濡れた肉体を見ているうちに,そのたくましい胴体が血にまみれていく幻想に興奮する。仮面のからくりを利用して「完全な告白のフィクションを創ろう」と試みたと作者がいうように,嘘の出来事,嘘の「私」,倒錯した性の心理を通して,第2次世界大戦後の喪失と虚無に遭遇した青年の危機的状況を描く。作者の半自伝小説。

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