強制手段によらない通常の捜査をいう。強制手段とは、判例によれば、個人の意思を制圧し、身体、住居、財産等に制約を加えて強制的に捜査目的を実現する行為など、特別の根拠規定がなければ許容することが相当でない手段を意味する。強制手段は法律に特別の定めがある場合にのみ許される捜査手段であるから、捜査はできる限り任意捜査によるべきであり、これを任意捜査の原則とよんでいる。その実質的根拠は、強制捜査は国民の人権に対する侵害を伴うものであるから、できる限り避けることが望ましいという点にある。もっとも、任意捜査であっても、なんらかの法益を侵害しまたは侵害するおそれがあることから、判例は、任意捜査であれば状況のいかんを問わずつねに許容されるものと解するのは相当でなく、必要性、緊急性なども考慮したうえ、具体的状況のもとで相当と認められる限度において許容される、としている。任意捜査としては、対人的処分として、被疑者の取調べ(刑事訴訟法198条)、被疑者以外の者(参考人)の取調べ、鑑定・通訳・翻訳の嘱託(同法223条)、公務所等への照会(同法197条2項)などがある。とくに法律規定のないものとしては、内偵、聞込み、尾行など多様な捜査方法がある。対物的処分としては、公道における実況見分などがある。
[田口守一]
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…学界では弾劾的捜査観が有力であるのに対し,捜査実務家の間では糾問的捜査観の主張が根強い。
[任意捜査と強制捜査]
捜査の方法として,相手に強制を加える強制処分を避けて,任意処分を利用すべきだという原則(任意捜査の原則)がある。刑事訴訟法197条も〈捜査については,その目的を達するため必要な取調をすることができる。…
※「任意捜査」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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