参考人(読み)サンコウニン

デジタル大辞泉 「参考人」の意味・読み・例文・類語

さんこう‐にん〔サンカウ‐〕【参考人】

犯罪捜査のため、被疑者以外の者で捜査機関出頭を求められ、取り調べを受ける者。出頭・供述は強制されない。
国会の委員会で、学識経験者などとして意見を求められる人。供述は強制されない。

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精選版 日本国語大辞典 「参考人」の意味・読み・例文・類語

さんこう‐にんサンカウ‥【参考人】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 犯罪捜査のため、捜査機関によって取調べを受ける、被疑者以外の者。証人と異なり、出頭・供述を強制されない。
    1. [初出の実例]「参考人として自動車に乗せられ、本署のある町まで同行を求められたときに」(出典:医師高間房一氏(1941)〈田畑修一郎〉四)
  3. 国会の委員会で、委員会の審査・調査のため意見を聞かれる者。証人と異なり、真実の供述を強要されない。
  4. 行政庁が一定の事柄について、その判断参考にするため意見を求める第三者

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改訂新版 世界大百科事典 「参考人」の意味・わかりやすい解説

参考人 (さんこうにん)

一般に参考人という場合,犯罪捜査で使われる場合と国会で用いられる場合とに区分できる。(1)犯罪捜査のために検察官司法警察職員など捜査機関によって取り調べられる被疑者以外の者を,参考人と呼ぶ(刑事訴訟法223条1項参照)。この取調べは任意の処分であり,強制することはできない。もし捜査に欠くことのできない知識をもつと明らかに認められる者が取調べを拒んだ場合には,第1回公判期日の前,すなわち公判の審理が始まるまでの間,検察官は裁判官にその者の証人尋問を請求することができる(226条)。なお,容疑は認められるが,被疑者とするにはいまだ足りない者を,とくに重要参考人と呼ぶことがある。
執筆者:(2)議院の委員会において,審査または調査のために必要と認められる場合に,学識経験者等から意見を聴くことがある。このような場合に意見を求められる人を参考人と呼ぶ(衆議院規則85条の2,参議院規則186条)。参考人は,議院の委員会が強制的に出頭させる証人(衆議院規則53条等)と異なり,不出頭や供述拒否に対して制裁を科せられることはない。参考人の発言については,発言に際し委員長許可を受けることなどの制限が課せられている(85条の2第3項等)。(3)いわゆる行政委員会などが一定の事項について意見を決定しようとする場合に,その判断の参考に供するため,その問題当事者・利害関係者以外の第三者からその問題について意見を聴くことがある。このような場合に意見を求められる人を参考人と呼び,関係人と並べて用いられることが多い(土地収用法65条1項1号,証券取引法183条1号等)。
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「参考人」の意味・わかりやすい解説

参考人
さんこうにん

犯罪の被害者目撃者等の被疑者以外の者であって、検察官、検察事務官または司法警察職員により、犯罪の捜査のために必要とされる場合に、出頭を求められ、取調べを受ける者をいう(刑事訴訟法223条参照)。参考人は、証人とは異なり、出頭義務、宣誓義務、供述義務を負わない。しかし、参考人の供述は調書に録取され、後に証拠となることが多い(同法321条1項2号・3号)。被疑者とされる可能性のある参考人を重要参考人ということがあるが、被疑者とは異なり、参考人には、黙秘権の告知も弁護権の告知もなされないため、重要参考人に被疑者の疑いが生じた段階で速やかにこれらの権利告知をなすべきであろう。また、犯罪の被害者を参考人として取り調べる場合には、とくにその権利保護に配慮する必要がある。被害者には、事案の真相解明に協力する一般的な義務はあるが、捜査の対象となることで第二次被害を受けることは避けなければならないからである。国家公安委員会の規則である犯罪捜査規範も、1999年(平成11)の改正で、捜査を行うにあたっては、被害者の心情を理解し、その人格を尊重しなければならないとする規定を設けている。

 また、各議院の委員会において、審査または調査のため、正式の公聴会の方法によらずに、学識経験者等、第三者として意見を求められる場合(国会法106条、衆議院規則85条の2、参議院規則186条)も参考人という。なお行政庁が一定の事業について意見決定の判断の参考にするために、意見を求められる第三者も参考人である。

[内田一郎・田口守一]

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百科事典マイペディア 「参考人」の意味・わかりやすい解説

参考人【さんこうにん】

(1)被疑者以外の者で,検察官または司法警察職員により,犯罪捜査のために出頭を求められ取調べを受ける者。(2)国会の委員会において,審査または調査のため,公聴会の方法によらずに意見を求められる学識経験者等。(1)(2)とも証人と異なり出頭・宣誓・供述の義務を負わない。(3)行政庁が一定の事項につき参考にするために意見を聞く第三者。
→関連項目公述人証拠隠滅罪

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「参考人」の意味・わかりやすい解説

参考人
さんこうにん

犯罪捜査において,被疑者以外の者で捜査機関の取調べの対象となる者 (被害者,目撃者など) をいう。捜査機関は,捜査上必要があるときは,参考人の出頭を求め,これを取調べることができるが (刑事訴訟法 223条1項) ,これはあくまで任意捜査であるから,その出頭を強制することはできない (198条1項但書,223条2項) 。捜査機関のもとでの参考人の供述を録取した調書は,一定の要件のもとに証拠として公判廷に提出されうる (321条) 。

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世界大百科事典(旧版)内の参考人の言及

【国会】より

… 公聴会議案を審査するために開かれるが,一般的関心および目的を有する重要な議案について,真に利害関係を有する者または学識経験者から意見を聴くかどうかは委員会の判断にまかされるが,総予算および重要な歳入法案については必ず公聴会を開かなければならない。 参考人議院の委員会が,審査または調査のため意見の開陳を求める人をいう。証人がその経験した事実の陳述を求められるのと異なる。…

【捜査】より

…緊急の場合には,ともかくも指名手配をし,あとで逮捕状の発付を受けることもある。 重要参考人参考人というのは,一般には,捜査過程において取調べを受ける被疑者以外の者のことである。しかし,重要参考人といわれる場合は,本質的には被疑者でありながら,いまだ嫌疑が不明確であるために,参考人として扱われる者を指して用いられる。…

※「参考人」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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