捜査機関が一定の場所や物の状態を五官の作用で認識する活動のうち,場所や物の所有者,所持者の承諾を得て任意捜査として行われる場合をいう。その実質的内容は,刑事訴訟法上強制捜査として令状により行われる検証と同じである。捜査実務では,検証よりもひんぱんに行われており,とくに交通事故による業務上過失致死傷事件では,実況見分は不可欠の捜査方法である。実況見分の結果は実況見分調書に記載されるが,最近では調書の簡易化により効率の向上を図るとともに,ステレオカメラや図化機など各種機器の使用によって正確性が高められている。調書には写真や図面などが添付されることが多い。実況見分調書の証拠能力については,明文の規定がないが,最高裁判所は,捜査機関の行った検証の結果を記載した書面に関する規定(刑事訴訟法321条3項)が適用され,伝聞証拠の例外として採用できると解しており,裁判実務もこれに従っている。しかし学説には賛否両論がある。
執筆者:酒巻 匡
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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