逮捕、家宅捜索、検証といった裁判官が出す許可状(令状)に基づく捜査。法律上は「強制の処分」と呼ばれる。身体の拘束や住居への立ち入りで人権を侵害する恐れがあるため、法律に根拠規定がある場合に限られる。尾行や張り込み、職務質問は、任意捜査で令状の必要はない。1976年の最高裁決定は「個人の意思の制圧」と「権利・利益に対する制約」の二つの要因を考慮して、強制捜査と任意捜査を区別する判断枠組みを示している。
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捜査機関が捜査の目的で行う強制処分のこと。強制捜査には、まず対人的強制捜査として、被疑者に対する逮捕、身体捜索・身体検査、勾留(こうりゅう)、鑑定留置などがあり、参考人に対しては、身体捜索・身体検査、証人尋問などがある。対物的強制捜査としては、捜索・差押え、検証、領置、鑑定処分などがある。強制処分は、法律に特別の定めがある場合に限られる(刑事訴訟法197条1項但書)。いわゆる強制処分法定主義である。しかし、たとえば人の自由を侵害する行為(たとえば、腕をつかむ行為)が強制処分である逮捕にあたるかどうかは、強制処分をどのように解するかによる。判例は、個人の意思を制圧し、身体、住居、財産等に制約を加えて強制的に捜査目的を実現する行為など、特別な根拠規定がなければ許容することが相当でない手段をいうとしている(最高裁判所昭和51年3月16日決定)。この立場からすれば、たとえば腕をつかむ行為も、単にそれだけで逮捕となるわけではなく、それが個人の意思を制圧する程度である場合にはじめて逮捕となる。学説では、個人の重要な利益を侵害する処分を強制処分と解する見解が有力である。この観点からすれば、個人のプライバシー権を侵害する行為も強制処分となる。法律も、通信の当事者のいずれの同意も得ないで電気通信の傍受を行う処分(いわゆる通信傍受、盗聴)を強制処分としている(同法222条の2)。なお、車両に使用者の承諾なくひそかにGPS端末を取り付けて位置情報を検索するいわゆるGPS捜査につき、判例は、GPS捜査は個人のプライバシーの侵害を可能とする機器をひそかに装着するもので、強制処分にあたるとしている(最高裁判所大法廷平成29年3月15日判決)。
強制捜査をするには、原則として、裁判官の発する令状を必要とする。いわゆる令状主義である。例外として、人を現行犯として逮捕する場合には令状を必要としない(憲法33条、刑事訴訟法213条)。また、人を逮捕する場合には、令状なくして捜索・差押え・検証をすることができる(刑事訴訟法220条)。
[田口守一 2018年4月18日]
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…刑事訴訟法は,検察官と司法警察職員との関係を協力関係とし(192条),一定の場合に検察官に指示・指揮の権限を与えている(193条)。 警察官たる司法警察職員は,司法警察員と司法巡査に区別されるが,両者は,強制捜査に必要な令状を請求する権限等に差異がある。司法警察職員には,警察官(一般司法警察職員)のほか,法律上特別に捜査権限を与えられた,いわゆる特別司法警察職員が含まれる。…
※「強制捜査」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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