六訂版 家庭医学大全科 「伝染性膿痂疹」の解説
伝染性膿痂疹(とびひ)
でんせんせいのうかしん(とびひ)
Impetigo contagiosa
(皮膚の病気)
どんな病気か
黄色ブドウ球菌あるいは
膿痂疹は、細菌で起こる皮膚の病気のなかで最も多い病気です。
原因は何か
水疱性膿痂疹は、虫刺されや擦り傷など皮膚の浅くて小さい傷に黄色ブドウ球菌が感染し、菌がつくる
症状の現れ方
水疱性膿痂疹(図46)は、虫刺され、湿疹などの引っかき傷、あるいは小さいけがなどのところに膜の薄い水疱ができます。水疱内の液は次第にうみのように濁って、簡単に破れてただれた皮膚(びらん)となり、すぐに痂皮ができて手でかいているうちに周辺だけでなく他の部分にも広がり、“飛び火”してゆきます。軽いかゆみがありますが、熱は出ません。
痂皮性膿痂疹(図47)は、季節や年齢に関係なく発症します。小さい水疱あるいは膿疱で始まり、すぐに黄色っぽい痂皮となって、これらが次々と急速に広がります。膿疱や痂皮の周囲では最初から赤みが強く、全身の熱が出てのども痛く、病変の近くのリンパ節もしばしばはれます。
いずれの膿痂疹も、顔や四肢など露出部にできることが多く、口のなかなど粘膜にはできません。手・足では角質層が厚いので、膿痂疹の水疱膜がしっかりして張り切った大きな水疱・膿疱となります。これを
検査と診断
破れていない水疱や膿疱の内溶液を培養すると、黄色ブドウ球菌あるいは化膿連鎖球菌を検出できます。痂皮性膿痂疹では、血液検査で白血球数が増え、CRP(体のどこかに炎症があると血液中に出てくる蛋白質の一種)陽性となり、連鎖球菌に対する抗体(ASO・ASK)が上昇することがあります。また、糸球体腎炎を合併することがありますから、検尿などの検査も必要です。
膿痂疹の診断は比較的簡単ですが、他の水疱ができる病気(虫刺され、接触皮膚炎、
治療の方法
水疱性膿痂疹では、黄色ブドウ球菌によく効く抗菌薬を3~4日間内服します。痂皮性膿痂疹では、ペニシリン系薬の内服が最も効果的ですが、黄色ブドウ球菌との混合感染も考えて内服薬を選びます。
水疱内の液やびらん部の分泌液がまわりの皮膚に付かないよう、水疱は内容液を抜いてから、痂皮やびらん部には、抗生剤の軟膏(かゆみがあれば軽めの
膿痂疹が治るまでは、風呂よりシャワー浴のほうがよく、痂皮や分泌物をよく洗い落とし、そのあとで軟膏療法を繰り返します。痂皮性膿痂疹の場合は、糸球体腎炎の合併を予防するために、よくなってもさらに約10日間は内服を続けます。
病気に気づいたらどうする
湿疹・あせも・虫刺され・ちょっとした傷などができた時は、膿痂疹にならないように、これらを早めに治療しましょう。夏には汗をかいたままにしないようシャワー浴を心がけ、爪を短く切っておくよう注意します。
膿痂疹ができてしまったら、数が少ないうちに専門医で治療を受けましょう。
多田 讓治
伝染性膿痂疹(とびひ)
でんせんせいのうかしん(とびひ)
Impetigo contagiosa
(子どもの病気)
どんな病気か
黄色ブドウ球菌あるいは
症状の現れ方
伝染性膿痂疹は2種類に分けられ、ひとつは
水疱性膿痂疹は、初夏から初秋に多くみられ、乳幼児・小児に好発します。虫刺されや湿疹病変、すり傷などから発症し、小さな水疱ができて次第に紅斑を伴ってきます。水疱は破れてびらんとなり、離れた部位にも
痂皮性膿痂疹は、季節に関係なく発症し、小児より成人に多くみられます。小さな水疱に始まり、
また、アトピー性皮膚炎に合併する場合は激烈な症状を示すことがあります。原因としては連鎖球菌によるものが多いといわれています。まれに後遺症として腎炎を起こす可能性があります。
治療の方法
ペニシリン系やセフェム系の抗菌薬を内服します。有効であれば急速に改善しますが、水疱性膿痂疹の場合は軽快後も2~3日間は再発しないように内服します。痂皮性膿痂疹では腎炎の発症予防のために10~14日間の内服が必要になります。
抗菌薬を含有する塗り薬が有効な場合があります。抗菌薬の内服を行う場合では、
病気に気づいたらどうする
抗菌薬の内服が治療の基本なので、皮膚科または小児科を受診します。他の園児・学童にうつす可能性があるため、露出部に病変がある場合はガーゼなどでおおった状態で登園・登校してください。
安元 慎一郎
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報