伝神(読み)でんしん

精選版 日本国語大辞典 「伝神」の意味・読み・例文・類語

でん‐しん【伝神】

  1. 〘 名詞 〙 人物文章や絵で描写して、その人の神髄精神を世に伝えること。また、そのもの。〔いろは字(1559)〕
    1. [初出の実例]「勿論一代の名臣の像もあり、何れも伝神にてはなし」(出典:随筆・孔雀楼筆記(1768)一)
    2. [その他の文献]〔晉書‐顧愷之伝〕

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普及版 字通 「伝神」の読み・字形・画数・意味

【伝神】でんしん

精神を伝える。〔世説新語巧芸長康(之)人を畫くに、或いは數年目睛を點ぜず。人其の故を問ふ。曰く、四體蚩(けんし)は、本(もと)妙處に關する無し。傳寫照、正に阿(あと)(このもの)の中に在りと。

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改訂新版 世界大百科事典 「伝神」の意味・わかりやすい解説

伝神 (でんしん)
chuán shén

中国絵画における肖像画本質をいう用語東晋顧愷之(こがいし)の〈論画〉にみられ,人物画の模写を論じて,形をもって神を写すとき,実対すなわち実際にその人物と向きあっているという感じを失うと生をとらえることができず,伝神もうまくゆかぬ,実対し通神することが人物画の要諦だという。伝神とは写実によってその人物の形姿のみならず精神までもとらえることである。《歴代名画記》は,〈伝神写照はまさに阿堵(あと)(そのところ,つまり瞳)の中に在り,伝神を実現するには眼の表現が一番大切だ〉という顧愷之のことばを載せている。明代に文人画が盛んになると,胸中丘壑(きゆうがく)を写すという意味で山水画についても伝神が言われるようになった(胸中丘壑)。
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世界大百科事典(旧版)内の伝神の言及

【写真】より

…それが真という文字にあらわれているのである。肖像画をさす言葉としてほかに,伝真,伝神,写照,写貌などがあり,伝真,伝神には写真と同じ,精神性を表現しようとする傾向が読みとれる。【戸田 禎佑】。…

※「伝神」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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