改訂新版 世界大百科事典 「歴代名画記」の意味・わかりやすい解説
歴代名画記 (れきだいめいがき)
Lì dài míng huà jì
中国,唐代の張彦遠(ちようげんえん)撰の画史。10巻。847年(大中1)に成る。伝説の軒轅(けんえん)時代から841年(会昌1)までの絵画について記した最初の本格的画史書で,《図画見聞志(とがけんぶんし)》以下の後世画史の範となった。前3巻は通論に当たり,絵画の源流,興廃,六法,山水樹石,師資伝授,顧愷之(こがいし)・陸探微・張僧繇(ちようそうよう)・呉道玄の四大家の用筆,品第,鑑識,表装などについて述べ,さらに当時の長安と洛陽の寺院道観の壁画を記録する。また後7巻は画人伝で,史皇から王黙にいたる373人の画家について時代を追って記す。その評論は,謝赫(しやかく),張懐瓘(ちようかいかん)など前人の画論,画史を参照しつつ,みずからの意見を加える方法をとる。顧愷之と呉道玄に対して最高の〈自然〉の評価を下し,特に呉道玄に持論の〈意気説〉の体現をみたところに,張彦遠の主張がうかがえる。また引用書に現在では佚書(いつしよ)となった顧愷之《画雲台山記》,宗炳(そうへい)《画山水叙》,王微《叙画》などが含まれるのも貴重である。
執筆者:曾布川 寛
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