伝統工芸(読み)でんとうこうげい

改訂新版 世界大百科事典 「伝統工芸」の意味・わかりやすい解説

伝統工芸 (でんとうこうげい)

伝統的な技法によって芸術的な工作品を製作すること。熟練した労働者(職人)が簡単な道具機械を使用して製作する小規模なものがほとんどである。清水焼九谷焼等の陶器友禅染等の繊維製品が代表的な例である。伝統工芸のなかには後継者の不足,工場で大量生産される類似品との競争等から衰退してしまうものがある。日本では伝統的技法に基づく地場産業育成振興を目的として,1974年に〈伝統的工芸品産業振興法〉が施行された。同法は,(1)主として日常生活に使われるもの,(2)伝統的な技術技法によるもの,(3)伝統的な原料をおもに使用するもの,(4)一定地域にまとまり,ある程度の従事者をもつもの,等の基準によって〈伝統的工芸品〉を指示し,統一マークの設定,伝統工芸士の認定などによる保護・育成を企画したものである。通産省が81年にまとめた伝統工芸品産業に関する報告書によると,全国の伝統工芸品約700品目のうち,振興法の指定を受けたものは南部鉄器津軽塗,益子焼等127品目,事業所約3万3000,年産額5100億円となっている。また,東京都も82年に東京組紐,江戸漆器等の4品を東京伝統工芸品の第1回指定の対象とした。

 諸外国においても伝統工芸は,(1)国の文化・伝統を形で伝える貴重な財産,(2)地方の文化・伝統の継承,(3)地方の産業の振興等の目的から保護・育成されているものが多い。また,伝統的な技法を使って現代好みに合った製品を製作し,伝統工芸をよみがえらせている場合もある。アイヌの伝統的な織り方,デザイン等を利用したテーブルクロス壁掛け等の生産が同様な例である。なお,伝統工芸に対して〈近代的工芸〉とは,機械による量産品に近代的な美術感覚によるデザインをほどこしたもので,20世紀初頭からドイツを中心に盛んになった。
地場産業
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「伝統工芸」の意味・わかりやすい解説

伝統工芸
でんとうこうげい

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