朝服の袍の色は大宝令の規定が以後の規準となり、平安朝もこの規準が踏襲された。しかし上位の濃い色が好まれて規定を冒す傾向が見られ、「大和物語」によれば、一〇世紀半ばには四位の緋は三位の紫となっていたことが知られる。その後も紫はますます濃くなり、一一世紀初め頃には四位以上は総て黒となったらしい。また五位は蘇芳、六位は縹となり、七位以下の制は廃れた。
古代官人の着る位階に相当する色目の表着(うわぎ)。冠位十二階以来、わが国の衣服制は、冠位あるいは位階によって衣服の色を異にして、官人の身分の差などを可視的に表示した。養老(ようろう)の衣服令(りょう)においても、一位は深紫、二位・三位は浅紫、四位深緋(ひ)、五位浅緋、六位深緑、七位浅緑、八位深縹(はなだ)、初位(そい)浅縹というように、位階に応じて衣(=袍)の色を区別し、これを「当色(とうじき)」とも称した。令制の「朝服」の系統を引くのは、平安時代の「束帯(そくたい)」である。ここでは天皇の束帯についても、儀式によって「黄櫨染(こうろせん)の袍」「麹塵(きくじん)の袍」などの位袍が定められた。官人の束帯の位袍については、のちに四位以上は一律に黒、五位は緋、六位は縹となり、七位以下は除位のことなく、3色のみになった。
[武田佐知子]
…三位以上の公卿で武官と文官を兼任する者は,儀仗の際を除いて縫腋の袍を着用した。束帯の袍は位袍(いほう)といって,位階により服色が決められている。これは〈衣服令〉に基づくものであるが,9世紀から天皇は白のほか黄櫨染(こうろぜん),青色(麴塵(きくじん)ともいう),上皇は赤色,皇太子は黄丹または赤色,親王と臣下の三位までは深紫,四位と五位は深緋,六位と七位は深緑,八位と初位は深縹(ふかはなだ)となった。…
…なお,縫腋袍の前身ごろをたくし上げて,かい込みをする分だけ前もって後腰の部分をたくし上げて縫いとめたものを格袋(はこえ)と呼んでいる。朝服の袍は位袍(いほう)といって位階によって服色が定められている。これを当色(とうじき)といい,養老の〈衣服令〉では天皇は白,皇太子は黄丹,親王と臣下の一位は深紫,二・三位は浅紫,四位は深緋(あけ),五位は浅緋,六位は深緑,七位は浅緑,八位は深縹(はなだ),初位は浅縹としている。…
…布袴装束の構成は冠,袍(ほう),下襲(したがさね),衵(あこめ),単(ひとえ),指貫,下袴,石帯(せきたい),笏(しやく),襪(しとうず)である。袍は位袍(位によって色が定められた)である。《満佐須計装束抄》は〈ほうこといふ事あり,きぬさしぬきうるはしくきて。…
※「位袍」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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