田畑、山林を含む農村の土地や市街地の土地・建物などの不動産を担保とする貸付をいうが、一般には広く解釈して財団抵当金融も不動産金融に含まれる。なお、狭義の不動産金融は、資金の使途も不動産にかかわる貸付をいう。たとえば、農業金融、住宅金融などがこれにあたる。
第二次世界大戦前の日本では、日本勧業銀行、各府県農工銀行が不動産金融による主たる貸付機関として機能し、日本興業銀行が財団抵当金融機関としてあったが、実際は普通銀行一般に、貸付担保に不動産が大いに使われた。とくに地方銀行の場合には、有利な抵当物件が少ないこともあって、不動産を担保とする貸付がきわめて高い割合を占めていた。不動産を担保とする貸付は長期にわたり、かつ担保価値の算定などに複雑な手数がかかるうえ、担保処分にも手数と時間がかかる。そこで明治末年以来、不動産金融は、普通銀行の経営をしばしば危うくさせ、第二次世界大戦下のインフレーションで解消されるまで、その流動化=資金化が大きな社会、金融問題として登場したこともあった。戦後は、不動産金融がしだいに増加してきたが、その背景には増大する都市勤労者の住宅問題解決策もあって、小規模な住宅地をも担保とする不動産金融拡大の道が模索された。加えて土地価格をはじめとする不動産価格の上昇があったから、不動産金融資金化のごときかつての困難は影として潜まされた。しかし、その影で不動産金融が地価騰貴を助長していると、社会問題化されてきただけでなく、その危うさが繰り返し指摘されてきた。その結果が1990年代初めのいわゆるバブル経済の崩壊であった。不動産抵当による貸付は、各金融機関に巨大な不良資産を生じさせ、日本経済を窮地に追い込み、多大な公的資産を投入させるに至った。
不動産金融を不良資産化して、金融機関に困難をもたらした最大の要因は、住宅金融を専門とする機関(住宅金融専門会社、いわゆる住専)を通じた多大な不動産貸付であった。政府は、住宅金融債権管理機構の設立、経営危機に陥った金融機関の一時的な国有化(のちに売却)、多大な公的資金の投入などを行った。この結果、メガバンク誕生にみられる大銀行の再編、中小金融機関の整理などが進み、危機はいちおう回避された。これ以後、異常な地価の動向はみられないが、庶民金融と不動産金融(住宅金融)は切り離されえないものであり、かつ金融機関の不良資産発生の要因たることが消えたわけではない。しかも最近の金融情況は国際的なつながりが予想されている。その象徴的なものが、アメリカを起点とするサブプライム問題であって、日本でも金融機関をはじめ各機関に多大な影響を与えただけでなく、重大な損害をもたらしている。
[岡田和喜]
『沓澤隆司著『住宅・不動産金融市場の経済分析――証券化とローンの選択行動』(2008・日本評論社)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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