共同通信ニュース用語解説 「佐伯氏」の解説
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(1)日本古代の氏族。大伴氏とともに大和政権の伴造(とものみやつこ)として,代々武力をもって朝廷に奉仕した。中央の佐伯氏(佐伯連)は,所伝では大伴氏と同祖で,5世紀後半の雄略朝ころの大連大伴室屋(むろや)の後裔とされ,684年(天武13)には宿禰姓を賜った。元来佐伯氏は,内国に移配された蝦夷で宮廷警衛の任にあたる佐伯部を管理する氏であったとみられ,中央では佐伯連が,地方では諸国の国造の一族である佐伯直(あたえ)がこれを管理した。《延喜式》等によれば,中央の佐伯氏は大伴氏とともに門部(かどべ)をひきい,大嘗祭や元日,即位などの大儀にさいし諸門の開閉・警衛に奉仕した。宮城十二門のうち,西面中央の門が818年(弘仁9)に藻壁門と改称されるまで佐伯門と称されていたのは,佐伯氏が代々朝廷警衛にあたっていたその名を負ったものである。645年(大化1)の蘇我入鹿暗殺事件に佐伯子麻呂(こまろ)が中大兄皇子のもとで活躍し,また元明朝の709年(和銅2)佐伯石湯(いわゆ)が征越後蝦夷将軍に任命されるなど,7~8世紀には佐伯氏の武門としての伝統に応じた活躍がみられた。宮城警衛の任にあたる五衛府の督・佐となる者も多く,律令官人として行政面に活躍する者もあった。しかし8世紀の後半になると,757年(天平宝字1)の橘奈良麻呂の変に陸奥守佐伯全成(またなり)が連座して自殺し,785年(延暦4)の藤原種継の暗殺事件にも関与するなど,大伴氏などと結んで藤原氏の政権に対して武力による転覆を企てることがしばしばあり,ために佐伯氏はかえってその政治上の地位を失った。9世紀には武門としての伝統も衰退し,しだいに上級官人層からは脱落した。
執筆者:笹山 晴生(2)安芸の豪族。厳島社神主家。《日本書紀》景行紀によれば,日本武尊の東征の際,俘虜として連れ帰った蝦夷を播磨,安芸,阿波,讃岐,伊予などに分置したのが佐伯部の起りとされている。安芸の佐伯氏は国造に連なる雄族として古くより厳島神社の祭祀権を担い,律令制下では佐伯郡司に任じられ,代々厳島社神主を世襲するとともに,一族を安芸国衙に分出させる(在庁官人田所氏)など,勢力を築いた。平安末期,平氏の後楯を得てかつてない権勢を振るった厳島社神主佐伯景弘は,同氏を代表する人物であった。承久の乱後,神主の地位は幕府御家人藤原氏にとってかわられるが,その後も一族は社家として存続をみた。なお讃岐の佐伯直氏からは,平安初期に僧空海が現れた。
執筆者:角重 始
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
(1)大連大伴室屋(おおむらじおおとものむろや)の後裔(こうえい)といわれる神別氏族。初め連(むらじ)姓、684年(天武天皇13)大伴氏とともに宿禰(すくね)姓を賜う。佐伯部を率いる軍事的氏族で、大伴氏と並んで宮門の警護にあたる。しかし、奈良末に今毛人(いまえみし)が参議になったほかは議政官に上る者もなく、中流貴族の域を出なかった。
(2)播磨(はりま)(兵庫県)・讃岐(さぬき)(香川県)の地方豪族で、ともに景行(けいこう)天皇の後裔と伝える。本姓は直(あたい)。僧空海(くうかい)は讃岐国多度(たど)郡領家(りょうけ)たる佐伯直氏の出身である。
(3)そのほか、河内(かわち)(大阪府)、阿波(あわ)(徳島県)、安芸(あき)(広島県)、越中(えっちゅう)(富山県)、丹波(たんば)(京都府・兵庫県)などにも佐伯氏があった。
前記のうち(2)(3)はいずれも各地の佐伯部を統率する地方的伴造(とものみやつこ)で、これらがいずれもさらに中央の上級伴造佐伯連氏に従属していた。なお佐伯部は服属した蝦夷(えみし)をもって組織された。
[黛 弘道]
古代氏族の一つ。名の語源は「塞(さえ)ぎる」で防守の意とする説が有力。佐伯部の祖は,景行朝に播磨・讃岐・伊予・安芸・阿波各国に移された服属蝦夷(えみし)と伝えられる。瀬戸内諸地域におかれた佐伯部を国造(くにのみやつこ)級地方豪族の佐伯直(あたい)が管理・統率して上番し,さらに中央でそれらを佐伯連(むらじ)が管掌しておもに軍事的任務についたと考えられる。連姓の佐伯氏は大伴室屋(むろや)の後裔で大伴氏とともに宮門を護衛したとされ,同族意識が強い。宮城十二門の一つに佐伯門がある。684年(天武13)に宿禰(すくね)姓を賜った。軍事力をもって活躍した人物が多いが,9世紀以降衰えた。直姓佐伯氏は景行天皇の子の稲背入彦(いなせのいりひこ)命の後裔とされ,地方豪族が主であり,9世紀以降宿禰姓を賜った者もある。厳島神社祠官の佐伯氏はこの系統か。ほかに造・首(おびと)姓がある。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報
…頼宗からの所領没収は,1203年(建仁3)山方為忠の壬生荘地頭職を取り上げ小代行平に与えた事例とともに,幕府の西国武士抑圧策の一環である。承久の乱(1221)にあたり,宗孝親をはじめ厳島神主佐伯氏,葉山氏などは京方に味方したが,乱後孝親の所領の多くが守護に還補された武田氏に引き継がれた。ほかに新補地頭として確かめうるものに,大朝本荘の吉川氏,三入荘の熊谷氏,安芸町村の平賀氏,都宇竹原荘の小早川氏,八木村の香川氏,温科村の金子氏などがある。…
※「佐伯氏」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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