日本大百科全書(ニッポニカ) 「価格政策」の意味・わかりやすい解説
価格政策
かかくせいさく
price policy
企業が商品の売価についてとる方策。売価政策ともいう。価格政策には、市場価格の存在を前提にした受動的順応策である順応的価格政策および消極的価格政策と、価格自体をつくりだす能動的適応策としての積極的価格政策および有機的価格政策とがある。まず順応的価格政策は、価格とコストの適合を図るもので、操業度の変化によるコスト増減をいかに吸収するかに関心が置かれる。その具体例が段階価格と最低価格である。段階価格は、コストの構成要素について回収断念順位を設定し、不況時にはその程度に応じた回収断念によって順応し、好況時にその分を回収する。段階価格の最下限が最低価格であり、価格をそれ以下にするよりは、むしろ操業休止などの政策をとることになる。消極的価格政策の具体例としては、おとり価格、紹介価格、見切り価格などがある。おとり価格は、2種以上の商品の総合的収益を考慮しつつ、特定商品の価格を安くして他の商品の宣伝に用いる方法である。紹介価格は、新商品発売時または新市場への参入時にとる宣伝的低価格である。見切り価格は、季節品や流行品が時季遅れになって生じる損失を回避するため急速に処分するときの低価格である。積極的価格政策の具体例は、独占価格、差別価格、ダンピング価格などであるが、前二者はしばしば管理価格として一括される。独占価格は、独占企業が極大利益を追求するため設定する計算価格である。差別価格は、同一商品の価格を地域、顧客層、時季などによって意図的に区別するものであり、そのうち、外国へ向けてコスト以下に設定したものがダンピング価格である。有機的価格政策は、社会的諸関係を広く考慮に入れて価格を設定するもので、政府の調達に応じるときの価格、統制経済下の価格などがこれにあたる。価格政策を流通システムの末端まで徹底させる方法の一つが、再販売価格維持契約である。
[森本三男]