〈蔵役〉〈土倉役〉〈土倉懸銭〉などともいう。中世,朝廷,幕府,寺社,大名,自治都市などが,金融業者である土倉(どそう)に課した税。酒屋役と併せ徴された場合が多く,臨時課税と恒常的な営業税とがある。臨時課税の土倉役として明らかであるのは,1315年(正和4)ころ,日吉(ひえ)社神輿造替の費用として京都の土倉に賦課したもので,山門支配下の土倉280軒に1宇別750疋,それ以外の55軒に1宇別1000疋を課している。それ以後,南北朝期には,朝廷も幕府も,〈土倉天役〉を課しており,祇園社が社領内11ヵ所の土倉に節料を課していたように,寺社も支配下の土倉に課税していた。これら諸権力の課税権をたちきり,室町幕府のもとに土倉に対する支配を集中し,営業税を課税したのが,1393年(明徳4)の酒屋土倉役の課税である。これは月ごとに質物の員数によって課税するものであった。したがって,徳政令などで土倉営業が立ちゆかない場合には,その徴収は不可能になったし,類火にあった土倉は6ヵ月間の納銭は免除された。幕府収納土倉役は毎月200貫ぐらいでなかったかといわれている。明徳の法では臨時課税の免除がうたわれているが,幕府財政の逼迫の結果,〈臨時ノ倉役トシテ大嘗会ノ有リシ十一月ハ九ケ度,十二月八ケ度也〉という《応仁記》の記述のように,土倉役に依存せざるをえなかったのである。
諸国大名も土倉役を領内の土倉に賦課した。今川氏は,1561年(永禄4)御用商人の松木氏に倉役・酒役などを免除していることによって,倉役徴収を知ることができる。さらに注目すべきは,自治都市である大山崎では市政機関である惣中が,土倉役を賦課している事実である。惣中の覚書である〈万記録〉には,1523年(大永3)の算用として田中というものから借りた20貫のうち10貫500文を〈土蔵役〉に用立てている。他の自治都市においても同様の賦課があった可能性が強い。
執筆者:脇田 晴子
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中世、高利貸金融業者である土倉(どそう)に賦課された課役。土倉役とも。鎌倉後期、近江(おうみ)(現、滋賀県)日吉社神輿造替(ひえしゃみこしぞうたい)の費用として「土倉課役(かやく)」が課されたのが早い例で、最も有名で恒常的なものとして知られるのが、室町幕府によって1393年(明徳4)に設定された「洛中辺土散在土倉并酒屋役(らくちゅうへんどさんざいどそうならびにさかややく)」である。その徴収には、公方御倉(くぼうおくら)で構成される納銭方(のうせんかた)が質物の員数に応じてあたった。その他、公家(くげ)領や戦国大名領、さらに寺社境内においても同様の役の存在が知られる。
[河内将芳]
『下坂守著『中世寺院社会の研究』(2001・思文閣出版)』
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