儘・随(読み)まま

精選版 日本国語大辞典 「儘・随」の意味・読み・例文・類語

まま【儘・随】

[1] 〘名〙 (「まにま」「まにまに」と同語源。修飾語句を受けて、形式名詞ふうに使われることが多い。また、助詞「に」を伴って接続助詞のように用いられる。→ままに)
① (体言、または用言による修飾を受けて)そのものの動き・変化、あるいはそういう動作に追従して、次の行動がなされるさまを表わす。
(イ) そのとおりに任せ従うこと。
源氏(1001‐14頃)乙女「ただ宣ふままの御心にて」
(ロ) (特に、人を表わす体言による修飾を受けて)その人の思うとおり、心のとおりであるさま。
落窪(10C後)一「まして北の方の御ままにて、はかなき事多かり」
浄瑠璃・鑓の権三重帷子(1717)上「いや我一人のままにもならず」
② (体言による修飾を受けて)そのものと変わらないさま。そのとおりであるさま。そっくりであるさま。
※枕(10C終)九六「うつくしみかなしがり、これが声のままに言ひたることなど語りたる」
③ (用言による修飾を受けて)そのような動作が終わって後、あらためて他の事をしないでいるさま。また、そのような状態が継続しているさま。
※源氏(1001‐14頃)末摘花「『内裏(うち)よりか』と宣へば『しか、まかで侍るままなり』」
④ 上にくる修飾句の表わす状態に従っただけである、という気持を示す。理由を説明する文に用いられるので、…のためだけであるさま、の意となる。
※虎寛本狂言・二人大名(室町末‐近世初)「太刀が持てもらい度さのままでをりゃる」
⑤ (放任する気持を込めて)勝手であるさま、思い通りであるさま。
(イ) 「なり」「である」などの断定の語がつづく場合。
史記抄(1477)一八「何にとせうともままなる理ぢゃほどにぞ」
(ロ) 文末にあって、つづく断定の語を省略する場合。時には感動の終助詞が付くこともあり、「ままよ」などの形で発語的に使われることもある。→ままよ(儘━)
※浮世草子・傾城色三味線(1701)湊「親達内儀に不足あって、家出をいたされふとまま」
書物などの校訂で、「底本のまま」「原文どおり」の意を示す語。原文のままでは文意が通じにくかったり、明らかに誤りがあると認められる場合、翻字者の誤りではなく、原文がすでにそうなっているのだということを示すために、問題の箇所の右傍に片仮名で小さくママと記す。
[2] 〘接助〙 ((一)から) 用言または助動詞連体形に接続する。
① (多く完了の助動詞「た」につづけて、「…たまま」の形で用いる) ある動作や状態が保たれた状況で、別の動作がなされたり、別の状態が起こったりする意を表わす。
※歯車(1927)〈芥川龍之介〉一「僕は巻煙草を啣へたまま、〈略〉冷笑しない訣には行かなかった」
② (多く手紙などに用いて)理由を説明する意を表わす。…ので。…によって。「是非一度お目にかかりたきまま、御都合の程お聞かせ願えれば幸甚に存じます」
※虎明本狂言・引敷聟(室町末‐近世初)「あまりまいがみぢかく候まま、さゆうへまはりて御まい候へ」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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