日本大百科全書(ニッポニカ) 「先天異常」の意味・わかりやすい解説
先天異常
せんてんいじょう
出生時から認められる形態学的、機能的異常をいい、その原因が出生後に獲得されたものでない、いわゆる先天的な原因による疾患がすべて含まれる。すなわち、先天的な外形および内臓の形態学的異常(いわゆる奇形)をはじめ、機能異常や代謝異常のほか、異常血色素症などの分子病や染色体異常などを含む遺伝性疾患があげられ、多種多様であるが、しばしば各種の異常を合併している場合がある。
先天異常の原因には、遺伝子異常や染色体異常などの遺伝的要因と、放射能をはじめ薬剤などの化学物質、風疹(ふうしん)などの感染症、栄養障害や酸素欠乏などの環境要因とがあるが、多くはこの両因子の相互作用によっておこるものと考えられている。また、先天異常の治療は困難なものが多いが、フェニルケトン尿症など代謝異常のなかには早期発見によって治療の対象となるものがあり、新生児のマス・スクリーニングが実施されている。これは、血中や尿中に増加する特異的な物質を測定することによって早期発見するわけであるが、このほか、ターナー症候群などの染色体異常や先天性代謝異常などの遺伝子異常による疾患に対しては、羊水検査による胎内診断も行われている。
[新井正夫]