国立公園や国定公園、景勝地などの自然環境を保全する目的で、観光客や入場者などから地方公共団体(地方自治体)が徴収する料金。受益者負担や利用者負担の原則に基づき、登山道・遊歩道・トイレ・柵(さく)の整備、ごみやし尿の処理・回収、希少動植物の保護、遭難者対策などに使われる。日本では、2014年(平成26)に成立した自然資産区域法で初めて徴収に法的根拠が与えられた。入域料は同法に定義された名称であり、それ以前から、日本各地には「入山料」「入園料」「入島税」「保全協力金」「保全募金」「環境保全税」「清掃協力金」「駐車場整理料」「法定外目的税」などの名目で多様な受益者負担を求める制度がある。
自治体による入域に関する料金の徴収例には、2014年時点で、世界遺産に登録された静岡・山梨県の富士山(料金1000円、任意徴収)のほか、北海道斜里(しゃり)町の知床(しれとこ)五湖(同250円、強制徴収)、青森県西目屋(にしめや)村の白神(しらかみ)山地・暗門(あんもん)の滝(同300円、任意徴収)、岐阜県高山市の乗鞍(のりくら)(観光バス1回3000円など、強制徴収)、滋賀県米原(まいばら)市の伊吹(いぶき)山(料金300円、任意徴収)、鹿児島県屋久島(やくしま)町の屋久島(同500円、任意徴収)、沖縄県伊是名(いぜな)村の伊是名島(同100円、強制徴収)などがある。これらは自治体条例(法定外目的税)や自然公園法(利用調整地区制度)など法的根拠がさまざまであり、料金水準、徴収方法、徴収対象、徴収時間帯なども多様であった。自然資産区域法の施行で入域料に法的根拠が与えられたことにより、今後、入域料を徴収する自治体や観光地が増えるとみられ、強制徴収に踏み切る自治体も増えると想定される。入域料の料金水準は、過去の事例から、おおむね100~1000円に設定されるとみられる。
なお海外では、入場者や利用者を適正水準に抑制する目的で入域料が高めに設定されることがあり、タンザニアのキリマンジャロ国立公園(1日70アメリカドル)やペルーのインカ帝国遺跡マチュ・ピチュ(126ヌエボソル、およそ4700円)などが有名である(2014年時点)。日本の入域料は環境保全費の徴収が目的であり、利用者制限は目的としていない。利用者制限を目的とする法制度としては、自然公園法による利用調整地区制度がある。
[編集部 2015年1月20日]
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