公出挙(読み)クスイコ

デジタル大辞泉 「公出挙」の意味・読み・例文・類語

く‐すいこ【公出挙】

奈良平安時代に官が行った出挙。租として納められた官稲を春に貸し付けて、秋の収穫後に3~5割の利息を付けて返させたもの。元来は勧農と救貧のための制度であったが、実際は強制的な一種の税として諸国農民負担となった。→私出挙しすいこ

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精選版 日本国語大辞典 「公出挙」の意味・読み・例文・類語

く‐すいこ【公出挙】

〘名〙 奈良・平安時代に国家が行なった稲の強制貸し付け。国司が租として納められた官稲を春に貸し付けて、秋の収穫後に三割ないし五割の高率の利息をつけて返させたもの。救貧と勧農を主旨とするものであったが、実際には強制的に貸し付けるなど雑税のようになって国家財政の大きな収入源となり、農民にとっては過重負担となって売地や逃亡浮浪の原因となった。

こう‐すいこ【公出挙】

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「公出挙」の解説

公出挙
くすいこ

律令制下,雑税として機能した国家による稲の貸借制度。諸国の郡衙に蓄えられた穎稲(えいとう)を,春・夏の2回強制的に貸し付け,秋の収穫後に5割(のちに3割に軽減)の利稲とともに元本を回収した。起源については,備荒種籾分与という共同体の再生産機能に求める考え方と,営料の下賜とみて共同体の支配を打破する新しいミヤケ制の支配に求める考え方がある。8世紀末以降,調庸にかわって正税への財政的依存が高まるなか,土地に対する賦課に転化した。

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旺文社日本史事典 三訂版 「公出挙」の解説

公出挙
くすいこ

古代,稲などの貸付け制度の一つ。地方豪族の私出挙に対し,政府や国司が行った出挙をいう。

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世界大百科事典(旧版)内の公出挙の言及

【出挙】より

…【池田 温】
【日本】

[古代]
 出挙は大化前代から屯倉(みやけ)や国造領で行われていたが,制度的に整備されるのは7世紀末から8世紀初頭である。出挙には公的な性格をもつ公出挙(くすいこ)と民間における私出挙がある。令の規定では債務契約は官の処理を経ない自由契約によること,複利計算は許されず利息は10割を限度とすること,債務不履行の際において質物で返済できないときや質物契約のない場合は家財が差し押さえられること,それでも不足するときは労働によって弁済することなどが定められている。…

※「公出挙」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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