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差止請求権 さしとめせいきゅうけん

百科事典マイペディアの解説

差止請求権【さしとめせいきゅうけん】

他人の違法な行為により自己の利益を侵害されたり侵害されるおそれのある者が,その行為の差止めを請求する権利。損害賠償に対して事前の救済を目的としており,英米法のエクイティに起源を持つ。
→関連項目人格権特許権

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産学連携キーワード辞典の解説

差止請求権

「差止請求権」とは、特許権を侵害している、もしくは侵害する恐れがある者に対して、侵害の停止、または予防を行うことが出来る権利のことを指す。「差止請求権」は、特許権者もしくは専用実施権者に与えられる権利であり、差止請求の他、特許権侵害により製造された製品の廃棄、侵害行為に基づく設備の撤去などの請求を行うこともできる。また、特許権共有者は単独で差止請求を行うことが出来る。

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世界大百科事典 第2版の解説

さしとめせいきゅうけん【差止請求権 injunction】

他人の違法な行為によって自己の利益を侵害されていたり侵害されるおそれのある者が,その行為の差止めを請求する権利。
[民法等における差止請求権]
 たとえば公害被害者が,公害発生企業または公共施設に対して違法な公害発生行為を止めるよう請求するような場合に問題となるが,差し止めることができるかどうかは,被害の態様と侵害行為の態様を総合的に判断して決められる。被害の態様が重大である場合,たとえば人の生命・身体が侵害されまたはそのおそれがある場合には,その侵害行為の態様を問わず差し止めることができる。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

差止請求権
さしとめせいきゅうけん

民法上

自己の権利を侵害され、あるいは侵害される可能性のある者が、その加害行為を行う者に対してそれをやめるよう請求することのできる権利。権利の侵害とは、法の保護に値する利益(法益)を違法に侵害することだと理解するならば、自己の法益を違法に侵害され、あるいは侵害される可能性のある者が、その加害行為をやめるよう請求することのできる権利だといってもよい。たとえば、隣の工場からの著しい騒音により生活妨害を受けている者が、その工場に対して一定レベルを超える騒音を発生させないよう請求したり、あるいは雑誌に名誉毀損(きそん)となる記事を書かれた者が、その記事の発表の差止め(発売の停止、回収など)を請求する場合などである。
 差止請求権は種々の場合に生じる。たとえば、振動により他人の建物に亀裂(きれつ)を生じさせたとか、生じさせるおそれがある場合のように、他人の財産に対する侵害ないしその可能性があれば、所有権など物権的請求権を根拠として差止めを求めることができる。また、大気汚染や水質汚濁により健康被害ないしその可能性があるとか、騒音や日照妨害により精神的苦痛を受けあるいはその可能性がある場合には、人格権の侵害を理由として差止めを求めることができる。名誉毀損、プライバシーの侵害、氏名権や肖像権の侵害などの場合にも、人格権に基づいて差止めを請求できる。
 以上のように、権利の侵害から差止請求権を導く考え方(判例・通説)に対して、不法行為が成立する場合には差止めを請求できる、とする考え方もある。さらに以上のほか、公害・環境破壊の事例では、環境権に基づき差止めを求めることができるかどうかが議論の対象になっているが、判例はこれを認めていない。
 差止請求権が認められるかどうかは、被侵害利益と加害行為の態様の両側面から判断されている。
 被侵害利益の側面とは、いかなる権利・利益が侵害されているか(あるいはその可能性があるか)ということであり、生命・健康のように権利性の強い法益の侵害の場合には、原則として加害行為の態様を考慮せずに差止めが認められ、精神的苦痛や不快感のような場合には、多かれ少なかれ加害行為の態様が考慮される。加害行為の態様の側面とは、加害行為に公共性があるかどうか、防止措置が容易かどうか、行政規制に違反していないかどうか、加害行為を行うにあたって(とりわけ立地などの場合に)アセスメントや住民同意を得る手続をとったかどうか、ということである。
 判例は、一般に、以上のような被侵害利益の種類・性質と加害行為の態様のほか地域性などを総合考慮して、被害が一般に受忍の限度を超えると認められるような場合には差止めを認め、そうでない場合には差止めを否定している。差止めの方法としては、防音壁の設置などの具体的な作為の請求のほか、騒音を一定限度を超えて発生させないといったような不作為請求も可能というのが、学説および下級審裁判例の考え方である。[淡路剛久]

会社法上

会社法において差止請求権が問題となるのは、株主・監査役による取締役等の違法行為の差止請求権と、既存の株主による募集株式発行の差止請求権である。前者は取締役等の違法行為の抑止のために存在している一方で、後者は募集株式発行によって不利益を受ける株主自身の利益保護のために存在しており、両者はその趣旨を異にする。[戸田修三・福原紀彦]
株主・監査役の違法行為差止請求権
取締役・執行役が違法行為を行い会社に損害を発生させた場合に会社への損害賠償請求義務を負わせているが、違法行為に対しては、起きた後の事後救済策よりも、起きる前の事前抑止策をとるほうが本来は望ましい。そこで本来は、会社が有する取締役等への監督権限の行使によりこのような抑止策をとるべきであるが、会社がこれを怠るおそれがある。このような場合を想定して、資本の出資者である株主や、経営監視の常置機関である監査役に、違法行為を差し止める権利を認めているのである。
〔1〕株主の差止請求 6か月前(6か月の要件は定款で短縮できる)から継続して株式を保有する株主は、取締役・執行役が株式会社の目的の範囲外の行為その他法令もしくは定款に違反する行為をし、またはこれらの行為をするおそれがある場合、この行為によって会社に著しい損害が生じるおそれがあるときには、取締役・執行役に対して当該行為をやめるように請求することができる(会社法360条1項、422条1項)。なお、以下の2点に注意を要する。
(1)非公開会社では6か月の継続保有要件は不要である(同法360条2項)。なお、非公開会社では取締役会設置強制なので、執行役に対する差止めに関する422条には同趣旨の規定は存在しない。
(2)監査役設置会社または委員会設置会社では、監査役・委員会の監査委員による差止請求を重視しており、株主による差止めの要件を「回復することができない損害」と厳格化している(同法360条3項。422条2項)。
〔2〕監査役・監査委員の差止請求 取締役の職務執行の監視機関である監査役、委員会設置会社における監視機関である監査委員にも差止請求権がある(同法385条、407条)。[戸田修三・福原紀彦]
募集株式発行の差止請求権
会社が法令・定款に違反し、または著しく不公正な方法で新株を発行しようとするとき、これにより損害を受けるおそれのある株主は会社に対して新株発行(自己株式の処分を含む)の差止めを請求できる(会社法210条)。不公正な株式発行により、既存の株主の持株比率が低下させられたり、持分(もちぶん)の実質的価値が低下されられるなど、不利益を被るおそれがある。当該差止めは、このような株主自身の利益保護を目的としており、株主・監査役の違法行為差止請求権とはその趣旨を異にする。なお、「不公正な株式発行」とは、たとえば、資金調達のニーズよりも、もっぱら特定の株主の持株比率の低下と現経営陣の支配権の維持を主要な目的とする株式発行が行われる場合が、これに該当する。[戸田修三・福原紀彦]
『総合研究開発機構・高橋宏志編『差止請求権の基本構造』(2001・商事法務研究会)』

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世界大百科事典内の差止請求権の言及

【物権的請求権】より

… 不動産賃借権は債権であって物権ではないが,民法605条,建物保護法1条などにより対抗力を備えているときは,物権と同様,不動産賃借権に基づく妨害排除請求権が解釈上認められている。公害差止めの根拠とされる人格権に基づく差止請求権も物権的妨害排除請求権から展開されてきた。物権【伊藤 高義】。…

【不法行為】より

…不法行為と判断されるか否かについては過失や因果関係という要件の内容の判断が行われたのに対し,効果の面では慰謝料の取扱いをとおして,現実の社会における損害事件から被害者を救済するための弾力的対応がなされてきたといえよう。
[差止め]
 なお,不法行為の効果は民法上は損害賠償義務の発生であるが,公害事件を重要なきっかけとして,加害行為の禁止(差止め)をも認めるべきことが主張されている(差止請求権)。差止めのためにはどのような事実が存在しなければならないかについては,裁判上の基準はまだ明らかになっているわけではない。…

※「差止請求権」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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