企業や個人が保有する資産を信託し、公益事業に活用する制度。奨学金支給や研究助成、国際協力、環境保全、芸術・文化の振興に使われるケースが多い。現行制度では主に信託銀行が管理、運用する。事業の名称には、財産を信託した人の名前や企業名を入れられる特徴がある。信託協会によると、法律は1922年から存在したものの、77年の第1号まで利用がなかった。受託件数は減少傾向にあり、2022年度の新規は2件にとどまった。
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祭祀,宗教,慈善,学術,技芸その他公益を目的とする信託(信託法66条)で,個人または法人が社会公共のために財産を信託し,受託者(信託銀行など)に公益活動を行わせる制度である。民間の公益事業には,財団法人や社会福祉法人など公益法人による事業と公益信託による事業とがあるが,英米では公益信託charitable trust(charity)がさかんに利用されている。日本では,1922年に信託法による公益信託の制度が設けられながら久しく実用化が見送られてきた。しかし公益法人について,休眠法人の増加や経理の乱脈などの問題が生じたため,総理府の後援で公益信託の育成が進められ,77年から82年の間に80件を超える公益信託が発足した。これまでの公益信託は,奨学金の供与や研究助成など資金の給付を目的とするものが多く,社会福祉や救貧を目的とするものが少ない。これは,公益信託が財産給付型の公益活動に適していることもあるが,社会福祉に関する厚生省の認可基準がきびしいことにも由来している。また拠出金が税法上損金扱いにならないため,財産の出捐(しゆつえん)者は事業法人が少なく個人が多い。公的な公益事業が財政事情の制約下にあるため民間の相互連帯的な公益活動の進展が望まれるだけに,税制上の助成と認可基準の緩和が必要であろう。イギリスのナショナル・トラストは自然環境運動のための公益信託だといわれている。
→信託
執筆者:山田 昭
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…日本では1905年の担保付社債信託法によって信託思想が導入され,22年の信託法および信託業法によって一般的な信託制度の法制化が実現した。
[信託の種類]
信託には大別すると私益信託と公益信託の2種がある。公益信託は宗教,慈善,学術など公益を目的とする信託であり,その設定には主務官庁の許可が必要である(信託法68条)。…
※「公益信託」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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