翻訳|eutectic
2成分以上を含む液体から同時に析出する2種以上の結晶の混合物で,共析晶eutectoid,共融混合物eutectic mixtureとも呼ばれる。2成分A,Bが液体状態では溶けあい,固体では混じり合わない場合の融点-組成関係は平衡状態図として図のように表現される。この平衡状態図は熱分析法によって種々の組成の溶液の冷却曲線を系統的に測定して作られる。極小融点に対応する特定の組成(A成分をxAmol%,Bを1-xAmol%)の溶液を冷却してある温度に達すると,ちょうど一成分純液体のように溶液全体が結晶化するまで温度が一定に保たれる。2種の結晶が細かく混合してできた機械的混合物でありながら,溶けるときにも一定温度を保つ純粋結晶のごとき挙動を示す。その融解温度を共晶点または共融点eutectic pointと呼ぶ。共融組成以外の溶液では最初に純成分AまたはBが析出し,温度の低下とともにしだいにその量を増しながら最終的に共融点で共融混合物が析出する。ベンゼン-ナフタレン2成分系を例にとると,1気圧下で共融組成はナフタレン13mol%に相当し,共融点は-5℃である。加圧下では共融組成,共融点ともに変化する。成分数を増やしていくと,三元共晶,四元共晶などが析出する。
執筆者:菅 宏
鋳物の製造のさいの金属は,一般に,鋳型の空隙部を満たすために流動性をもたせる必要から低い融点が要求される。共晶組成の合金が選ばれるのはこのためで,代表的な実用合金としては鋳鉄(鉄-炭素共晶),アルミニウム-ケイ素共晶(シルミン系合金)があげられる。日本ではそれぞれ年産約500万t,70万tほど生産されている。
共晶組織は共晶反応によって形成された金属組織であり,2元系合金においては2種の固相が混じり合った組織である。構成される元素,凝固時の条件等により非常にさまざまな形態をとるが,代表的な形態は各固相が微細な薄片となり互いに重なり合った層状組織で,ラメラー共晶lamellar eutecticと呼ばれる。これは最初に晶出した固相核の両側面に他の構成固相が晶出し,その繰返しによって層状に発達したもので,成長方向は層状方向に垂直である。不純物の少ない共晶組織は各層の厚みがそれぞれ均一な整然とした層組織を呈するが,不純物が多くなるにつれ層の均一性はくずれ,コロニー組織や棒状組織に代表される変形組織となる。コロニー組織は層状共晶組織上にセル状組織が重なって生成される。棒状組織は一方の固相の成長が他固相により分割され棒状に変化して形成される。また,一方の固相の体積率が他固相に比べ極端に少ないと,一方の結晶成長が止まり,不連続共晶となる。このような共晶組織を積極的に利用し,いろいろの特性をもつ材料の開発が行われている。強靱性,耐熱性をもつ相を共晶反応によってつくり,共晶複合材料を得ようとするものなど,成果が期待されている。
執筆者:梅田 高照
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
液体から同時に2種類以上の結晶の混合物が析出する現象.たとえば,二成分系の液体の場合,液体と二成分の結晶が共存する平衡点では,自由度は0となり不変系であるから,温度一定で両結晶の組成比が一定の共晶をつくる.水と無機塩類の系で,含氷晶といわれる共晶ができるのはこの一例である.多成分系で自由度がゼロでなければ,温度は変化し,組成比も温度によって一定にならない共晶をつくる.[別用語参照]相律
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...
12/17 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新