日本大百科全書(ニッポニカ) 「冷却曲線」の意味・わかりやすい解説
冷却曲線
れいきゃくきょくせん
高温の状態にある物体から熱を奪っていき、それにつれて物体の温度が下がっていくようすを、物体の温度と時間との関係で図示した曲線。熱を奪う条件を一定に保ちながら冷却曲線をとれば、液体の固化、固体の変態などの現象をとらえることができる。このような曲線を利用して物質の融点や変態点を決めることができ、さらに種々の組成の試料について求めれば、合金とか、無機、有機の化合物の混合物の状態図を作成することもできる。しかし、一定の割合で熱を奪うことはかならずしも容易ではない。そこで、変化をおこさない試料(中性試料、参照試料とよぶ)を同一環境に置いて、それとの温度の差(試料に変化がおこれば温度の遅滞などがおこる)を測る方法(示差熱分析)とか、試料が一定の温度下がるのに要する時間を温度に対して目盛る方法(逆速度曲線)、一定時間間隔ごとにおこる温度変化を測定して記録する方法などいろいろくふうされている。逆速度曲線を用いて、1887年にフランスの金属学者F・オスモンが鉄の変態を解明している。
第二次世界大戦後は、エレクトロニクス技術の開発で、実験手段が格段に進歩したので精密な測定ができるようになった。また、冷却曲線だけでなく加熱曲線をとるなど、いろいろ利用されている。
[長崎誠三 2015年4月17日]