2人以上の者が犯罪を共謀し,そのうちの一部の者が現実の犯罪実行を担当した場合,実行に関与しなかった共謀者をも教唆犯や従犯としてではなく,共同正犯(刑法60条)として処罰すること。判例は旧刑法時代から,この観念を認めており,当初は恐喝,詐欺罪などの知能的犯罪に限っていたが,後には殺人・強盗などすべての犯罪に適用するに至った。これに対して,通説は,〈共同して犯罪を実行した者〉と規定する刑法60条の文理解釈,共同正犯と従犯の区別の明確性という観点から,基本的構成要件に該当する行為を分担しない共同正犯を認めることに強く反対してきたが,判例を支持する立場からは,一部の者による実行を共謀によって形成された超個人的団体そのものの実行ととらえる共同意思主体説が唱えられてきた。さらに最近では,この観念が確立した判例であること,背後の黒幕を重く処罰しうるという利点をもつことにかんがみ,刑法60条にいう〈実行〉を規範的・実質的に解することにより,犯罪実現に重要な役割を果たした者を共同正犯とする考え方も有力となっている。なお,改正刑法草案は共謀共同正犯の立法化を予定している。
→共同謀議
執筆者:西田 典之
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…もっとも,各自がはじめから実行行為の一部を行う必要はなく,ある者が他の者の実行行為に途中から加わってもよい(承継的共同正犯)。ただし,判例は共同実行の要件をゆるめ,犯行を共謀しただけで,実行行為に荷担しなかった者までも共同正犯だとしている(共謀共同正犯。これには強い批判がある)。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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