刑法典において規定された共犯の一形態であり(刑法62条),幇助(ほうじよ)犯ともいう。従犯とは,正犯者の犯罪実行を容易にする者であるが,その行為内容は,凶器や資金の供給などの物理的援助のみでなく,助言や激励などの心理的援助をも含む。しかし,新たに犯罪の決意を生ぜしめる行為は教唆犯(61条)となるから,心理的方法による幇助は,すでに犯罪的決意を有する者omnimodo facturusの犯意を強化する場合に限られることになる。通説によれば,構成要件に該当する実行行為を行う者は(共同)正犯であり,従犯とは,実行行為以外の方法による加功をいうが,判例上は,実行行為を分担しない者も,犯罪の共謀への加担によって共同正犯たりうるとされている(共謀共同正犯)ため,例えば,侵入窃盗・強盗の実行に際して,被害者宅の見取図,合鍵を調達した者,あるいは,見張りを務めた者などであっても,従犯ではなく,なお共同正犯(60条)として処罰されうることになる。従犯の成立には,従犯の側に正犯の犯罪行為を援助する意思のあること,さらに原則として正犯が犯罪の実行に着手したことを必要とするが,反対に,正犯の側では援助を受けていることの認識を必要としないと解するのが判例・通説である(片面的従犯)。従犯の刑は,正犯の法定刑に照らして必ず減軽される(63,68条)。なお,拘留・科料だけにあたる罪(例えば侮辱罪)については,特別の規定がないかぎり,従犯は処罰されない(64条)。
執筆者:西田 典之
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正犯を幇助(ほうじょ)した者は、従犯とされ(刑法62条1項)、刑は「正犯の刑を減軽する」(同法63条)。幇助犯ともいう。共同正犯、教唆犯とともに、共犯の一形態である。「正犯を幇助する」とは、正犯者の実行行為を、物理的または心理的に容易にすることである。幇助行為は正犯者の実行行為にとって不可欠である必要はない。幇助の方法には、凶器を貸与したり、犯罪の場所を提供するなどの物理的手段による場合(有形的従犯)のほか、犯罪を決意している者に対し、これを激励したり、助言したりするなどの精神的手段による場合(無形的従犯)の2種類がある。正犯者の犯罪を防止すべき法律上の義務を負う者が、その義務に違反してこれを怠る場合を「不作為による従犯」という。また、幇助者が幇助していることを被幇助者(正犯者)が知らない場合を「片面(へんめん)的従犯」とよぶ。なお、従犯の主観的要件として幇助の意思を必要とする立場からは、過失による従犯は認められない。
[名和鐵郎]
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…一つは,犯罪に関与した者すべてを正犯として処罰する(イタリア刑法等)という方法であり,他は,処罰を犯罪への特定の関与形態に限定し,しかも関与のしかたに応じて処罰に軽重を設ける(ドイツ刑法等)という方法である。日本の刑法は後者に属し,共同正犯(60条),教唆犯(61条),従犯(幇助(ほうじよ)犯ともいう。62条)の規定をもつ。…
…陰謀とは,犯罪を実行することについて2人以上の者が合意することをいう。 〈共犯〉の形態として,刑法総則は,共同正犯,教唆犯,従犯の3種を認めている。〈共同正犯〉とは,2人以上共同して犯罪を実行することをいい,みな正犯とされる(60条)。…
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