当世具足(とうせいぐそく)の下に着る衣服。中世には、鎧(よろい)の下に武家の通常着であった直垂(ひたたれ)の袖(そで)を細め、袖口と袴(はかま)の裾(すそ)に括(くく)り緒(お)を設けた鎧直垂(よろいひたたれ)を用いたが、近世に入り甲冑(かっちゅう)形式が変革し、当世具足が盛行すると、鎧直垂は衰退して新形式の衣服を生じた。これを当時の記録(藩政史料など)は「具足下」と記している。具足(甲冑)の下に着る衣服の意である。
具足下は上衣と下衣とに分かれ、単(ひとえ)、袷(あわせ)および綿入れがある。上衣は立襟(たちえり)のボタンがけ、袖は筒袖あるいは袖口を細め、袖口を絞るボタンを設けるなど和洋折衷式で、中世末から近世初めにかけて輸入された、南蛮の服飾の影響が顕著にうかがわれる。下衣はももひきのほか裁付袴(たっつけばかま)や小袴(こばかま)などとし、素材はじょうぶな麻が多く使用された。これを藍(あい)染め、茶染めの無地や文様染めにし、五つ紋、七つ紋などの紋章を染め付けることもあった。甲冑が装飾化、威儀化した江戸中期以降は、平絹、縮緬(ちりめん)、紗綾(さや)などの絹織物が好まれ、高級品は金襴(きんらん)、銀襴、錦(にしき)などで仕立てられた。また一方、中世の狩衣(かりぎぬ)や直垂などの形式を採用したものが現れ、もっぱら復古調の大鎧や胴丸などの下に用いられた。これは鎧下(よろいした)と称すべきもので、具足下や中世の鎧直垂とは異なる。
[山岸素夫]
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