内航海運(読み)ナイコウカイウン

デジタル大辞泉 「内航海運」の意味・読み・例文・類語

ないこう‐かいうん〔ナイカウ‐〕【内航海運】

国内の港の間を航行する船舶によって貨物を運ぶこと。内航海運業法では「内航運送」として規定
[補説]広義には、人の輸送も含めていう。→内航輸送

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改訂新版 世界大百科事典 「内航海運」の意味・わかりやすい解説

内航海運 (ないこうかいうん)

もっぱら一国の領土内で流動する貨物や旅客海上輸送に従事する海運業をいう。大量輸送とこれによる低運賃輸送の実現という船舶の輸送特性が,船舶輸送を効率的・経済的なものにしている日本の地理的条件と結合しているために,日本の国内貨物輸送における内航海運の重要性は著しく高い。日本の重要産業の生産システムの大部分が海上輸送を前提として配置され,工業地帯の多くが臨海部に位置している現実を見ても,内航海運の重要性がわかる。内航船は,輸送トン数では国内流通貨物のわずかな割合しか輸送していないが,輸送トンキロでは全国内流通貨物の約半分近くを輸送している。輸送トン数に比べて輸送トンキロで見る重要性が大きいのは,輸送需要において大量性と同時に長距離性という特質をもっている石油化学製鉄セメント工業などの日本の基幹産業が生産する製品・半製品の産業基礎物資を,主要な輸送対象としているからである。日本の重要産業が最も必要とする石油製品,鉄鋼セメント石炭などの原材料物資に限って見ると,内航海運は全体の80%余り(トンキロ・ベースに基づく)を運んでおり,この分野での貢献度は他の国内輸送機関を大きくしのいでいる。このように日本の内航海運は隻数およびトン数ともに世界のどこの国をも大きく上回るずば抜けて大規模な船隊を擁し,またどこの国よりも高い国内貨物輸送分担比率を示している。

 一方,食料品や一般消費財などの国内雑貨輸送の分野では,荷主の輸送サービスの選択において本来的に輸送の迅速性,確実性,機動性(戸口から戸口までの輸送)が重視されることと,輸送ロットが小さいことから,内航船による輸送分担比率は非常に低い。しかし,内航船は他の輸送機関に比べて,トンキロ・ベースの輸送量に対比されるエネルギー消費量が少なく,しかも海上を航行するので,トラック輸送などに見る排気ガスや騒音などの公害がない。また,道路建設や鉄道敷設などの新しい社会資本の投下を必要としないし,労働力の有効利用の面でも他の輸送機関よりも優れた特性を有している。一方,近年の道路事情の悪化,エネルギー資源の供給不安定および値上り,騒音・公害問題など,陸上輸送を制約する条件が増大している。したがって,省エネルギー,省力化,環境保全などの点で優れている内航船を,鉄鋼や石油などの基礎資材と同じように国内雑貨輸送の分野においても積極的に利用しようという気運が高まっている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の内航海運の言及

【海運業】より

… また,海運業は,国内の貨物や旅客の輸送においても,大きな役割を果たしている。内航海運は,現在,石油製品,鉄鋼,セメント,石炭など日本の重要産業がもっとも必要とする原材料物資の8割余りを,また国内流通貨物全体では約半分(トンキロ・ベースで,1980年度の実績)を,それぞれ輸送している。国内貨物輸送における船舶の重要性がこのようにひじょうに高いのは,日本の基幹産業の生産する産業基礎物資がその輸送需要において大量性と同時に長距離性という特質をもっており,これが船舶による貨物輸送を効率的に行うことを可能にしている日本の地理的条件と海上輸送の低廉性とに結合しているためである。…

※「内航海運」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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