12世紀から15世紀にかけてヨーロッパ各地に伝播した騎士物語群。作中で活躍する騎士たちの盟主アーサー王(6世紀ころのブリトン族の伝説的首長)の宮廷では,席次を廃するため円形の卓子が用いられたことからこの呼称が由来している。起源はおそらくイングランドあるいはウェールズに伝わるケルト説話であるが,物語としての成立が確認されるのは12世紀のフランスにおいてであり,ワースの《ブリュ物語》(1155)などをおそらく母体として,クレティアン・ド・トロアの《イバンまたは獅子の騎士》《ランスロまたは荷車の騎士》などの長編によって確立された。クレティアンの未完の遺作《ペルスバルまたは聖杯物語》には,韻文による膨大な続編,さらに散文の作品が次々に書き継がれて,13世紀前半に〈聖杯物語群〉を形成する。そこでは円卓の騎士たちはこぞって聖杯探索の神秘的な冒険に身を投じ,十字軍時代の武人の理想と運命を反映した。これらの物語はイギリスに逆輸入されて《サー・ガウェインと緑の騎士》《頭韻詩アーサーの死》《スタンザ詩アーサーの死》,マロリー卿の《アーサーの死》等の傑作を生み,ドイツでもクレティアン作品の影響下にハルトマン・フォン・アウエ,ウォルフラム・フォン・エッシェンバハらによって優れた韻文作品が作られ,イタリアでも《タボラ・リトンダ》を生むなどした。
→アーサー王伝説
執筆者:天沢 退二郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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