日本大百科全書(ニッポニカ) 「冷温帯林」の意味・わかりやすい解説
冷温帯林
れいおんたいりん
夏に緑の葉が茂り、冬に落葉する樹種によって代表される森林で、夏緑広葉樹林ともよばれる。なお、温帯林とは主として冷温帯の落葉広葉樹林をさす。冷温帯林は、北は針葉樹を主とする亜寒帯林に、南は暖温帯のオリーブやコルクガシを主とする硬葉樹林や、カシ、シイ、クス、ツバキなどを主とする照葉樹林に接している。北半球の冷温帯林はおよそ北緯35度から50度にかけた中緯度地帯(冷温帯)に発達し、垂直分布では山地帯にあたる。また、暖かさの指数(温量指数)では85℃から45℃の間にある。代表的な植物群落としてはブナ林やナラ林があり、カエデ、ニレ、シナノキ、トネリコ、トチノキなどの林もこれに含まれる。北半球にはこの冷温帯林の優勢な地域が3か所ある。中部ヨーロッパ、中国から北日本にかけた東部アジア、北アメリカ東部の三つで、いずれの森林も似たような種で構成されている。
冷温帯林は季節の移り変わりにしたがって多彩な姿をみせ、林床植物も多様である。有用広葉樹として家具、器具に重要視される木目の美しい樹種の多くは冷温帯林から生産されるし、銘木といわれるものの大部分もこの森林から得られる。落葉広葉樹の材はこれまで自然林によっていたが、世界的にその資源が不足してきたため、人工林による育成も始められている。
[鮫島惇一郎]