翻訳|hymen
女性の腟の開口部の近くにある粘膜のひだ。両面は重層扁平上皮におおわれ,それに挟まれて粘膜固有層にあたる結合組織が存在する。処女膜は,処女でも完全に腟口を閉じているのではなく,小孔により開口し,月経血や子宮分泌液などを通す。中央部が開口した環状処女膜が通常であるが,篩状処女膜,中隔処女膜などもみられる。処女膜は性交によって裂け,処女膜痕carunculae hymenalesとなって残る。この際,小裂傷を生じ出血するが,多くは自然止血する。ときに粗暴な性交により裂傷が処女膜基底部まで及び,大出血をきたし縫合を要する場合もある。処女膜は性交以外でも,医師の診察,手術,タンポン使用などにより破れることもある。処女膜は初回分娩時に大部分が離断し処女膜痕として残る。処女膜が異常に厚く強靱で性交が妨害されるものを処女膜肥厚強靱という。治療はこれを輪状に切除する。処女膜閉鎖症は先天的に処女膜が閉鎖するもので,月経が開始しても月経血は腟外に排出されないで潜伏月経の状態で止まり,月経のたびに周期的下腹痛(月経モリミナ)があって,診療されて初めて発見されることが多い。治療は,処女膜を切開して内容物の排除をはかり,抗生物質を投与して感染を防止する。なお,処女膜は一部のサル類にもみられる。
→性器
執筆者:藤田 尚男+塚原 嘉治
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
性交経験のない女性、すなわち処女の腟前庭(ちつぜんてい)と腟との境界にある膜状組織で、腟口はこれにより狭くなる。前面は皮膚、後方は粘膜の性質をもつ。形態とその硬度には個人差があってさまざまである。腟口が中央に位置する環状処女膜、処女膜の後縁が前縁より高くなっている半月状処女膜、垂直に完全に両分されている分離処女膜、部分的に両分されている半分離処女膜、腟口が多数の小孔となっている篩(ふるい)状処女膜、中央部が広がった鎌(かま)状処女膜などが生理的にみられる。多くの場合、初回の性交によって破れるが、それ以外の原因で破れることもあり、性交後も膜が保存される場合もある。したがって、処女膜の状態から処女性を決めることには慎重でなければならない。
肥厚処女膜や処女膜強靭(きょうじん)症では痛みのために性交が不可能になるので、処女膜切開が行われる。処女膜は初回の分娩(ぶんべん)によって破れたのちは変形し痕跡(こんせき)的になり、処女膜痕とよばれる。処女膜に孔(あな)がなく腟口が閉じているのは処女膜閉鎖症である。この場合には月経血の流出路がないために初経がなく(偽無月経)血液は体内に貯留するので、月経の時期になると一過性の周期的な下腹痛が繰り返されて、回を重ねるごとに痛みはだんだん強くなる。初経が遅れてこのような症状がある場合には、腟に血液がたまる腟留血腫(けっしゅ)、子宮にたまる子宮留血腫、卵管にたまる卵管留血腫が考えられるので、処女膜を切開することにより順調な月経がみられるようになる。
[新井正夫]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加
9/20 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新