流体力を利用して,粉粒体をその粒子径の大小にしたがって分離すること。広義には流体力による分離だけでなく,ふるい分けも含める場合がある。さらに極端には,比重選別,磁力選別などすべての粒子分離操作を分級と呼ぶ場合があるが,これは技術用語として好ましくない。空気,水などの流体の中で運動する粉粒体の各粒子には,重力あるいは遠心力のほかに,流体による作用力が働く。この力,すなわち流体抗力drag forceは粒子径に依存し,また重力や遠心力とは粒子径との関係を異にするので,両者間のつりあい条件が粒子径によって左右される。この原理を利用した粒径分離操作が狭義の分級である。
重力場において等速沈降する球形粒子に対する力のつりあいは次式で表される。
(m-m′)g=R ……(1)
ここでmは粒子の質量,m′は粒子によって排除された流体の質量,gは重力換算係数,Rは流体抗力である。流体抗力Rはさらに,次式で表すことができる。
ここでdは粒子の直径であり,πd2/4はその最大断面積すなわち投影面積に相当する。ρは流体の密度,vは粒子の沈降速度である。CDは無次元の係数で,抵抗係数drag coefficientと呼ばれ,粒子の周りの流体の相対的な流れの様態によって決まることが知られている。水または空気の中で粒子径100μm以下,粒子の密度3g/cm3以下の条件では,粒子の周りの流れはほぼ層流とみなされ,その場合Rは次式で表される。
R=3πμvd ……(3)
ここでμは流体の粘度である。
(3)式を(1)式に代入すると,
なので,次式が得られる。
ここで,δは粒子の密度である。
(4)式はストークスの沈降速度式と呼ばれ,分級における分離粒子径を求めるための基本式として重要である。上記の基本式のほかに,ある種の分級装置においては,流体の流れ方向が急激に変化したとき,流れに伴って運動する粒子の慣性力の効果が重要な役割を果たしている。
流体が空気その他の気体である場合の分級操作を乾式分級(または空気分級),水その他の液体である場合のそれを湿式分級と呼んでいる。分級に使われる装置は分級機classifierと呼ばれる。乾式分級機には慣性力を利用するもの,重力沈降を利用するもの,遠心力を利用するものがある。慣性力を利用する乾式分級機にはルーバー式分級機,バーチャルインパクター,エルボージェット型分級機などがあるが,乾式分級機としては遠心力を利用する機種が最も広く使われている。遠心力を利用した乾式分級機としては,分級粒度30~100μm程度の比較的粗い粒度での大量処理に古くから使われるスターテバント型,ファントンゲレン型などに加え,数μm~30μmの分級が可能な多数の機種が開発され,広く使われるようになってきた。またサイクロンも微粒から粗粒に至る粉体の乾式分級に利用されている。湿式分級機には重力式と遠心力式があり,前者はさらに上昇水流と流動層を利用した水力分級機,円錐形または角錐形の容器における重力沈降を利用した沈降分級槽(セットリングタンク,スピッツカステンなど),緩やかに傾斜した長方形の槽から沈下した粗粒産物をかき上げるためのレーキやスパイラルを備えた機械分級機,その他に分類される。遠心力を利用した湿式分級機としては,サイクロン(ハイドロサイクロン)がもっとも代表的であるが,ソリッドボウル型,ディスク型などの遠心分離機も微粒子用分級機として利用されている。
執筆者:井上 外志雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
原料固体粒子を,大きさ,または密度の異なる2ないしそれ以上の群に大別する操作をいう.前者を分粒,後者を選別という.分級の目的のために使用する装置を分級器といい,そのおもなものとしては,粒子群の重力沈降速度の差のみで分級する沈降分級器,沈降槽の底部からの圧力水の上昇流によって分級する水力分級器,レーキによって粗粒をかき上げ,排出する機械的分級器,および遠心力を利用し,サイクロンで分級する遠心分級器などがある.このほか,固体粒子群の分級には,浮遊選別,浮上分離,磁力選別などがある.[別用語参照]ふるい分け
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…これは特定の請求を法律上なしてゆくうえで,法律的にはどのような性格の要求あるいは問題であるかを特定することと関係する。これが請求あるいは問題の法律的性質の決定=法性決定characterisation(classification,Qualifikation)と称されるもので,すべての法律の適用上ありうることではあるが,通常はほとんど大きな問題とならずにすんでいる。ところが渉外的関係の処理にあたって,この目的のために抵触規定を適用しようとするときは問題の重要さがあらわになってくる。…
…〈分類〉とは文字どおり,対象を類に従って(似たものをまとめて)分けることであるが,〈類別〉とは違って,全体を共通性に従って大きく分け,分けたものをさらにまた共通性に従って細分し,これ以上分けることのできない個体の一つ手前(種という)まで順次分けていって段階づけ,体系化することをいう。 分類するという営為はおそらく人類の歴史とともに古く,植物や動物にすでに見られるように,自分と同類のもの(とくに異性)とそれ以外のものに分けることが始まりであったと見られる。…
…ある集合Sを,部分集合の直和,にわけることを類別という。各Sμはこの類別の類であるという。Sの2元a,bについて,a,bが同じ類Sμの元であるとき,a~bで表せば,(1)任意a∈Sについて,a~a(反射律),(2)a~bならばb~a(対称律),(3)a~b,b~cならばa~c(推移律)が成立する。この条件(1),(2),(3)をみたす関係を同値関係といい,a~bのときaとbは同値であるという。上と逆に集合Sに同値関係が与えられれば,同値なものが同じ類に入るようにして,Sは類別される。…
※「分級」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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