江戸時代につくられた絵図の一種で、特定の地域を部分的にくぎってあるもの。村絵図の一つとして村役人によって作成され、耕地の位置や形状、秣場(まぐさば)や用水施設の位置・境界を示すのに使用された。面積についてはかならずしも正確ではない。また、江戸のような大都会では、全体を1枚の絵図にした場合、取扱いに不便であったり、詳細な内容を盛り込めないため、より便利な切絵図が発達した。広義の切絵図としては、1670年(寛文10)以降発売された『江戸大絵図』がある。これは江戸全体を5分割したものだが、縮尺は5間を図の1分としたもので、小図ではない。1769年(明和6)出版の『新編江戸安見(やすみ)図鑑』は市中を17図に分割したが、形態上は図帖(ずちょう)になっている。小図の切絵図としては、1755年(宝暦5)に出版が始まった吉文字屋(きちもんじや)版が代表的なもの。以後幕末期に至り、近吾堂(きんごどう)版、尾張屋(おわりや)版、平野屋版などが刊行され、全盛期を迎えた。これらは、市中の武家屋敷のほか各種施設が記入され、それぞれに特色があり、利用者の便宜が計られている。
[吉原健一郎]
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