正式名称は、日米地位協定の実施に伴う刑事特別法。日米安全保障条約に基づき、在日米軍の基地・施設を保護するため1952年に制定された。第2条には正当な理由なく、米軍が使用する施設、区域に入ることを禁じる規定がある。共謀罪の構成要件を変えた組織犯罪処罰法改正案の原案では、刑特法第4条の米軍事裁判所で偽証するなどの罪と、第5条の米軍の兵器、弾薬、被服その他を損壊する罪がその対象となっている。
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刑法および刑事訴訟法に関する特別法を意味するが,通常は,〈日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う刑事特別法〉(1952公布。当初の名称は〈日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第3条に基づく行政協定に伴う刑事特別法〉という名称であったが60年に改正),〈日本国における国際連合の軍隊に対する刑事裁判権の行使に関する議定書の実施に伴う刑事特別法〉(1953公布),〈日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定の実施に伴う刑事特別法〉(1954公布),とりわけ第1番目に挙げた法律をさし,またこれはさらに略して刑特法とも呼ばれることがある。この合衆国軍隊の地位協定の実施に伴う刑事特別法には,日本国内に合衆国軍隊が存在することにより生じる問題に対処するため,罰則ならびに刑事手続に関する特別の規定が定められている。罰則は,合衆国軍隊を主として保護するためのもので,施設または区域を侵す罪(2条),軍用物を損壊する等の罪(5条),合衆国軍隊の機密を侵す罪(6条)などが規定されている。刑事手続に関しては,施設または区域内での逮捕等(10条),差押え・捜索等(13条),合衆国軍隊との間の被疑者の引渡し(11条),受領(12条)などのほか,共助に関する規定が定められている。なお,1957年に起こった砂川事件では本法の違反が問題となり,その根拠となっている安保条約や米軍の駐留がそもそも憲法違反ではないかが争われた。
執筆者:山口 厚
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「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う刑事特別法」(昭和27年法律第138号)の略称。日米地位協定の改定に伴い、昭和35年法律第102号で現行の題名に変更されたが、内容上の実質的改定はほとんどなかった。第1章「総則」では、「合衆国軍隊」「軍属」「家族」などを定義し、第2章「罪」では、施設または区域を侵す罪(2条)、軍用物損壊罪(5条)、機密を侵す罪(6条)などを規定。第3章「刑事手続」では、日米地位協定第17条による裁判権の制限に伴う、合衆国軍隊の施設または区域内における逮捕・勾引(こういん)・勾留・捜索・差押・検証等の手続の制限(10条、13条、14条)、および日本の裁判機関、捜査機関と合衆国軍事裁判所、合衆国軍との刑事事件における協力関係などについて規定している(11条、12条、15条~19条)。
[大出良知]
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…日米安保条約および米駐留軍の合憲性が争われた事件。1957年7月8日,東京調達局は,米駐留軍が使用する東京都下砂川町の基地拡張のために測量を強行したが,これを阻止しようとする基地拡張反対派のデモ隊の一部が米軍基地内に立ち入り,刑事特別法条違反で起訴された。この訴訟で,被告人らは,安保条約およびそれに基づく米国軍隊の駐留が憲法前文および9条に違反すると主張したので,一大憲法訴訟となった。…
※「刑事特別法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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