帰有光(読み)キユウコウ(その他表記)Guī Yǒu guāng

デジタル大辞泉 「帰有光」の意味・読み・例文・類語

き‐ゆうこう〔‐イウクワウ〕【帰有光】

[1506~1571]中国、明の文人崑山江蘇省)の人。あざな熙甫きほ、号は震川。身辺雑事を繊細かつ叙情的に描いた散文は高く評価され、王世貞と並んで明代散文作家の代表者とされる。

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精選版 日本国語大辞典 「帰有光」の意味・読み・例文・類語

き‐ゆうこう‥イウクヮウ【帰有光】

  1. 中国、明代の文学者。字(あざな)は熙甫(きほ)。号は震川。江蘇崑山の人。官は南京太僕寺寺丞に進む。当時は文壇主流から孤立、のち明代散文の第一人者と認められる。著「三呉水利録」「震川文集」など。(一五〇六‐七一

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改訂新版 世界大百科事典 「帰有光」の意味・わかりやすい解説

帰有光 (きゆうこう)
Guī Yǒu guāng
生没年:1506-71

中国,明代の文人。江蘇崑山の人。字は煕甫,震川先生と称された。嘉靖44年(1565)60歳で進士となり,長興知県,順徳府通判,南京太僕寺丞を歴任。《史記》,韓愈欧陽修古文好み,その〈花史館記〉は《史記》に心酔したことを示す一例。当時の文壇は後七子の勢力が強く,彼はその中心である李攀竜(りはんりゆう),王世貞らを〈妄庸の巨子〉と批判し,王世貞らも,彼の古文を認めなかった。王世貞は晩年に〈帰太僕賛〉を作り〈千載公有って韓・欧陽を継ぐ〉とほめた。銭謙益が《列朝詩集》の小伝で,その独自の古文を推称してから,清朝の桐城派の古文の範となった。また長く科挙に苦しんだために,経義に通じ八股文(はつこぶん)の名手であった。彼の古文には八股文の手法をいかした面が,独自の作風となって,評価される。巷間に流布している帰有光評点と称する《史記》は,帰有光の名をかたった偽作である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「帰有光」の意味・わかりやすい解説

帰有光
きゆうこう
(1506―1571)

中国、明(みん)代中期の古文家。字(あざな)は煕甫(きほ)、号は震川(しんせん)。崑山(こんざん)県(江蘇(こうそ)省)の人。1565年(嘉靖44)60歳で会試に及第、南京太僕寺丞(ナンキンたいぼくじじょう)に至った。文壇の主流で秦(しん)漢の文を模倣する前後七子(しちし)らの古文辞すなわち偽古文派を鋭く批判し、唐宋(とうそう)の詩文を規範として対立、その領袖(りょうしゅう)王世貞(おうせいてい)らを妄庸(もうよう)の巨子(きょし)とこき下ろした。彼は司馬遷(しばせん)、唐宋八大家を承(う)け継ぎ、後の方苞(ほうぼう)、姚鼐(ようだい)ら清(しん)の桐城(とうじょう)派古文を導く明代第一の古文家として今日評価されるが、その文は簡潔を極め、身辺のこと、家族のことに筆が及ぶとき、叙情豊かに精彩を帯びる。「寒花葬志」「先妣(せんぴ)事略」などは名文として名高い。著書に『震川先生集』30巻、『同別集』10巻がある。

[都留春雄]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「帰有光」の意味・わかりやすい解説

帰有光
きゆうこう
Gui You-guang

[生]正徳1(1506)
[没]隆慶5(1571)
中国,明の文学者。蘇州崑山県 (江蘇省) の人。字,煕甫 (きほ) 。号,震川 (しんせん) 。嘉靖 19 (1540) 年挙人に及第,以後会試に落第し続け,嘉定の安亭江畔で学問教育の生活をおくり,同 44年 60歳で進士に及第,長興知県,順徳府通判を経て隆慶4 (70) 年南京太僕寺寺丞に進み,『世宗実録』編纂に従事中没した。簡潔で格調高い散文作家として知られ,『史記』,韓愈,欧陽修の文を重んじて,いわゆる古文辞派を主流とした当時の文壇からは白眼視されたが,清代になるとむしろ明代の代表的散文家と評価され桐城派からは模範と仰がれた。王慎中,唐順之とともに「嘉靖の三家」といわれる。著書『三呉水利録・続録』『震川先生全集・別集』など。

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世界大百科事典(旧版)内の帰有光の言及

【中国文学】より

…もっとも,韓愈のスタイルは独特のものであって,七子らはそれをまねることを好まなかった。 七子らの主張に反対して,韓・柳の古文を学ぶべきことを公言したのは唐順之と帰有光である。唐宋八家の名もこのときに定まったのであった。…

※「帰有光」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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