照合用に登録された花押,また,それの多人数分を集録した簿冊。文書に署記された花押(判形(はんぎよう))が本人のものかどうかを確かめるために,あらかじめ花押を登録させて,随時の照合に備えることは,文書が遠隔地間で授受される場合や,文書の真偽が当事者の利害に重大な関係をもつ公文書,契約文書において,とくに必要であったと考えられるが,そのような花押の登録制度がいつから始まったかどうか明らかでない。花押を変えた人が,最初にその花押を署記した文書に,花押の変更と今後この花押を証とすべき旨を注記した例が中世文書に見られるのは,その文書をそのまま判鑑の用に備えるための措置であったと考えられる。
近世に入ると,通行手形その他免許証検閲制度の整備とともに,各種の判鑑が作成,備用されるようになった。通行手形吟味のために関所,番所に備えられた判鑑はその代表例である。なお,家の系図に歴代の花押影を書き入れて判鑑と称した例(喜連川(きつれがわ)判鑑)もあるが,これは上記の判鑑と機能,目的を異にするものである。
明治以降,印章の証拠力が花押に優越するようになり,照合用の印影を登録する印鑑の制度が整うのにともなって,判鑑は効用を失った。ただ今日でも,花押は大臣の閣議書類などの署記に用いられており,そのため大臣は,就任の初めに各自の花押を登録することになっている。これが今日に残る判鑑ということができる。
執筆者:佐藤 進一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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