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花押 かおう

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

花押
かおう

書判 (かきはん) ともいう。簡略な形に変化させた自署。自署は最初楷書で書いたが,次第に草書体 (草名) になり,その人独特の形様に模様化したとき花押と称した。花押の類型としては草名から変化した草名体,実名の冠,扁,旁 (つくり) などを合せる二合体,ある1字を形様化した一字体,符号ようのものや象形的なものを用いる別用体などがある。花押は自筆で一筆で書くのを原則とするが,同一人の花押でも長年月の間には変化がみられるものや,2種類以上使用した例もある。花押を印刻したものもあり,近世になると籠字 (かごじ。輪郭だけの文字) を墨で塗って花押としたものもある。江戸時代以後は庶民の間では印章が普及し,あまり用いられなくなった。

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デジタル大辞泉の解説

か‐おう〔クワアフ〕【花押/華押】

文書の末尾などに書く署名の一種。初め、自署のかわりとして発生したものが、平安末期より実名の下に書かれるようになり、のちには印章のように彫って押すものも現れた。その形態により、草名(実名の草書体をさらに図案化したもの)、二合体(実名の旁(つくり)などを組み合わせたもの)、一字体(実名の一字、または特定の文字を図案化したもの)、別用体(文字と関係のない動物などの形を図案化したもの)、明朝体(中国の明代に流行した様式で、天地2本の線を引いたもの)などに分かれる。また、まったく単純な略記号からなるものを略押(りゃくおう)という。花字(かじ)。押字(おうじ)。→書き判

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百科事典マイペディアの解説

花押【かおう】

書判(かきはん)とも。署名の一種。古くは文書の署名は楷書(かいしょ)による自署であったが,名を草書にくずして形様化した草名(そうみょう)によるものが生じ,平安中期ごろ以降より一層形様化した一種の記号によるものが用いられた。
→関連項目印章血判御内書朱印状姓名判断天正大判御教書

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世界大百科事典 第2版の解説

かおう【花押】

記号もしくは符号風の略式の自署(サイン)で,判(はん),書判(かきはん),判形(はんぎよう),押字(おうじ)などともいった。花押の起源は自署の草書体にある。これを草名(そうみよう)とよび,草名の筆順,形状がとうてい普通の文字とはみなしえないまでに特殊形様化したものを花押という。
[起源と種類]
 花押の発生は中国にあって,その時期は遅くも唐代中期と見られている。日本の花押も中国にならって用い始めたと考えられ,その時期は遺存史料の限りでは10世紀前半期ころのようである(933年の坂上経行の花押が初見)。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

花押
かおう

自署のかわりに書く記号。印判と区別して書判(かきはん)ともいう。印章と同様に文書に証拠力を与えるもので、個人の表徴として偽作を防ぐため、その作成には種々のくふうが凝らされた。
 花押は中国の唐代から現れるが、わが国では平安時代の10世紀のころからしだいに用いられるようになった。初め自署は楷書(かいしょ)で書くのが例であったが、行書から草書に変わり、しだいに実名の二字の区別がつかない図案風のものとなった。これを草名(そうみょう)といい、平安時代に多くみられるが、後世までとくに書状に用いられることが多かった。花押の類型は、作り方からみると草名体のほかに、実名の二字の一部を組み合わせた二合体(にごうたい)、名の一字だけをとった一字体、文字と関係のない図形を用いた別用体、中国の明(みん)代に流行した様式で、天地の2本の横線の間に書く明朝体があり、以上の5類型は江戸時代の有職家(ゆうそくか)伊勢貞丈(いせさだたけ)の分類として有名である。しかしこのほかにも、前記の類型の複合型もあり、苗字(みょうじ)・実名・通称の組合せによるものなど、その様相は複雑である。一字体のなかには変種が多く、実名と関係のない文字を選んで、理想や願望を表したりするものが室町時代以降戦国織豊(しょくほう)期に多くなり、文字を倒置したり裏返しに書くものも現れた。禅僧の花押も一種独特の風味のあるもので、文字よりは符号に近い抽象的な表現になっている。また身分の低い者や無筆の者が用いる略押も花押の一種で、〇や×などの簡略な符号であった。同一人でも草名体と他の形式の花押をもつ例があり、義満(よしみつ)以降の足利(あしかが)将軍のように武家様と公家(くげ)様の花押の2種を使用する例もみられる。また一生の間には花押にも書風の変遷があるが、意識的に、改名・出家・政治的地位の変化などを転機として花押を変えることがあり、偽造を防ぐために頻繁に改作したり、用途によって数種の花押を使い分けることもあった。
 花押は時代によってもその様相は変遷する。平安時代は草名体・二合体が主流であり、中世になると二合体・一字体がそれにかわり、さらに前述の新様式が現れ、江戸時代には明朝体がもっとも流行した。花押は自署のかわりとして発生したものであったが、平安末期より実名の下に花押が書かれるようになり、のちには実名と花押を連記する風が生じた。実名と花押の関係が薄れると印章と変わるところがなくなり、さらに花押を彫って捺(お)すようになると、花押も印章化し、花押にかわって印章を捺すことが一般化した。なお、今日でも閣僚などが公式文書に花押を使用することがある。[皆川完一]

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世界大百科事典内の花押の言及

【印章】より

…武将と禅宗,武将印と禅林印,その影響の上に印判状が出現すると考えるべきであろう。
[花押と印章]
 印に代わって繁用されたのは花押(かおう)である。花押は古代の署名に源を発し平安中期から発達したサインの一種で,印章に関係はあるが,書札礼の上からは印章より優位にある。…

【裏判】より

…文書の紙背(裏)に書かれた花押。中世,相手に敬意を示す意味で請文(うけぶみ)の署名の裏に花押を書く習慣があった。…

【署名】より

…法令中の署名なる語を自署の意味に解することは原則的に正しいが,署名であるためには必ず自署であることを要しかつ自署だけでよい,とはいいきれない。 署名は,署名者にその最終的意思を確認させる(署名の主観的理由)とともに,署名者の同一性を明示するため(客観的理由)のものといえるが,これらの必要性は,代署,ゴム印の使用等,自署以外の方法で署名者の名称を記載(名称の記載一般を〈記名〉という)して拇印(または指印)や花押(かおう)(書判)をおすことによっても満たすことができる。それに,日本の一般社会生活では,重要な行為については,自署のうえなお印章を押捺すること(署名押印)をもって正式な形式とし,さらに,押印があれば名称の記載方法を問わない(記名押印,記名捺印)傾向がある。…

【爪印】より

…近世日本の爪印は天皇裁可や吟味物(火付,人殺し,盗賊など重科のもの)には常用されていて,宗門改めには〈15歳以下60歳以上には爪印をさせた〉と文献に見える。1873年(明治6)の太政官布告は,爪印を花押(かおう)とともに裁判上の証拠として無効とし,実印だけの効力を認めた。爪印は墨を爪にぬって紙面に印することよりも,紙面に爪痕をのこす方法がもっぱらとられたため,消えやすく後世にはのこらない。…

【手紙】より

…距離・時間を要し面談の不自由な場合は,両者の確認に差出し(発信人),宛名(受取人)を記し,日時の経過(年月日付)も勘案されることになり,本文以外にこの3項が要求される。とくに謀書(ぼうしよ)(偽書),謀判(ぼうはん)のありうる鎌倉時代以降には,発信人の真なることの証明も必要とされ,その人独自の模倣しがたい自署(花押(かおう))が創出される。私信は内容の秘密性により必然的に右筆(ゆうひつ)には任せられず,自筆にならざるをえない。…

【判鑑】より

…照合用に登録された花押,また,それの多人数分を集録した簿冊。文書に署記された花押(判形(はんぎよう))が本人のものかどうかを確かめるために,あらかじめ花押を登録させて,随時の照合に備えることは,文書が遠隔地間で授受される場合や,文書の真偽が当事者の利害に重大な関係をもつ公文書,契約文書において,とくに必要であったと考えられるが,そのような花押の登録制度がいつから始まったかどうか明らかでない。…

【右筆】より

…それらの人々は京下りの公事奉行である太田氏,三善氏などの一族または末裔が多く,北条一門や外様の有力御家人からなる引付衆に指揮される存在で,引付衆よりは一段下位の身分であり,幕府吏僚としては下層に位置付けられた。関東下知状などの幕府の発給文書は彼ら右筆が清書し,差出者の名判を記す署名部分の花押(かおう)のみ執権,連署,探題などの重役が書いた。したがって文書の筆跡は右筆のそれであって,必ずしも発給者を表すものではない。…

【略押】より

花押(かおう)の代りに用いられた簡略な記号,符号。略花押ともいい,古文書学上の名辞。…

※「花押」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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