前川康男(読み)マエカワヤスオ

デジタル大辞泉 「前川康男」の意味・読み・例文・類語

まえかわ‐やすお〔まへかはやすを〕【前川康男】

[1921~2002]児童文学作家。東京の生まれ。学徒出陣し、中国で終戦。戦争国家問題を問う「ヤン」「魔神の海」を発表。「かわいそうな自動車の話」で野間児童文芸賞受賞。他に「奇跡クラブ」「おかあさんの生まれた家」など。平成3年(1991)紫綬褒章受章。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「前川康男」の意味・わかりやすい解説

前川康男
まえかわやすお
(1921―2002)

児童文学作家。東京・京橋生まれ。少年時代を東京と札幌とで過ごす。早稲田(わせだ)大学独文科に学ぶ。早大童話会の機関誌『童苑(どうえん)』に掲載された「ぼくはぼくらしく」(1942)など写実的な童話の佳作を発表。同誌学徒出陣号(1944)に「夜汽車の話」を書き残して出征、中国で敗戦を迎える。汽車に乗って入営する「僕」を主人公とする「夜汽車の話」では、まだぼんやりした輪郭しかもたなかった「国家」は、復員後の「原始林あらし」(1950。『児童文学研究』掲載)では、原始林に住みついた開拓民を、国有林に入り込むのは違法として追い出しにかかる権力として、はっきりと姿をあらわす。「川将軍」(1951。『びわの実』掲載)ほかで児童文学者協会新人賞受賞。リアリズムを鍛えながら、「国家」や「戦争」へのアプローチを続け、それは、『ヤン』(1967。サンケイ児童出版文化賞)、『魔神の海』(1969。日本児童文学者協会賞)の2長編として実を結ぶ。前者では、戦争に体ごとぶつかっていく中国人少年を、後者では、アイヌと江戸時代の日本との争いを書く。ほかに、ファンタスティックな長編童話『奇跡クラブ』(1966)、短編集『ふしぎなふろしきづつみ』(1973)、成長する少年の心をくきやかに描いた『おかあさんの生まれた家』(1979)、『かわいそうな自動車の話』(1981。野間児童文芸賞)、ミステリアスな『テクテクさんのちょっとこわい話』(1992)、戦争で記憶を失った男が子供時代と出会い直す『森のなかの魚』(1993)、江戸時代の船頭、重吉を主人公とする重厚な長編『千石船漂流記』(1995)、ショートショート集『世界一すてきなお父さん』(1998)など多様な作品がある。雑誌『びわの実ノート』編集同人。1991年(平成3)、紫綬褒章(しじゅほうしょう)を受ける。

[宮川健郎]

『『ぼくはぼくらしく』(1963・三十書房)』『『ふしぎなふろしきづつみ』(1973・実業之日本社)』『『かわいそうな自動車の話』(1981・偕成社)』『『ヤン』(1987・理論社)』『『テクテクさんのちょっとこわい話』(1992・文渓堂)』『『森のなかの魚』(1993・フレーベル館)』『『だんまり鬼十』(1994・フレーベル館)』『『千石船漂流記』(1995・フレーベル館)』『『世界一すてきなお父さん』(1998・小峰書店)』『『魔神の海』『おかあさんの生まれた家』(講談社青い鳥文庫)』『『奇跡クラブ』(偕成社文庫)』『神宮輝夫著『現代児童文学作家対談4 今西祐行・大石真・前川康男』(1988・偕成社)』『宮川健郎著『現代児童文学の語るもの』(1996・日本放送出版協会)』『井上ひさし選、日本ペンクラブ編『児童文学名作全集4』(福武文庫)』

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20世紀日本人名事典 「前川康男」の解説

前川 康男
マエカワ ヤスオ

昭和・平成期の児童文学作家



生年
大正10(1921)年12月25日

没年
平成14(2002)年10月14日

出生地
東京都京橋区木挽町(現・東京都中央区)

学歴〔年〕
早稲田大学文学部独文科〔昭和19年〕卒

主な受賞名〔年〕
日本児童文学者協会新人賞(第2回)〔昭和27年〕「川将軍」,サンケイ児童出版文化賞(第15回)〔昭和43年〕「ヤン」,児童福祉文化賞奨励賞〔昭和43年〕,日本児童文学者協会賞(第10回)〔昭和45年〕「魔神の海」,野間児童文芸賞(第19回)〔昭和56年〕「かわいそうな自動車の話」,紫綬褒章〔平成3年〕,勲四等旭日小綬章〔平成8年〕

経歴
昭和14年第一早稲田高等学院に入学、早大童話会で創作童話に没頭。学徒出陣の戦場体験が、以後の創作活動の根幹となる。25〜36年新潮社勤務。38年から坪田譲治主宰の「びわの実学校」(現・「びわの実ノート」)編集同人。45年に「魔神の海」で第10回日本児童文学者協会賞を受賞し、現代日本児童文学の代表的リアリズム作家となる。56年「かわいそうな自動車の話」で第19回野間児童文芸賞を受賞。著書に「ヤン」「だんまり鬼十」など。

出典 日外アソシエーツ「20世紀日本人名事典」(2004年刊)20世紀日本人名事典について 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「前川康男」の解説

前川康男 まえかわ-やすお

1921-2002 昭和後期-平成時代の児童文学作家。
大正10年12月25日生まれ。早大在学中に学徒出陣で入隊,中国で敗戦をむかえる。昭和25年から新潮社に勤務し,38年「びわの実学校」編集同人。長編「ヤン」「魔神の海」で戦争や国家の問題を問いつづけ,「かわいそうな自動車の話」で56年野間児童文芸賞をうけた。平成14年10月14日死去。80歳。東京出身。

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367日誕生日大事典 「前川康男」の解説

前川 康男 (まえかわ やすお)

生年月日:1921年12月25日
昭和時代;平成時代の児童文学作家
2002年没

出典 日外アソシエーツ「367日誕生日大事典」367日誕生日大事典について 情報

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