抽象的には、利子を生み出す資本を利潤を生み出す資本に転化するときに生じる特別利得をいう。具体的には、株式会社を設立した創業者(法律上、発起人は1人でよいが、この問題では単複いずれでもよく、創業から株式を非公開で保有してきた人をいう)が、のちになって株式を売却したり、上場して株式を公開したときに得た特別利得をいう。創業者利潤ともいう。創業者は、現金を出資して最初の株式保有者となるが、事業開始後に業績をあげて配当率が利子率を上回れば、株価は投資金額よりも高くなる。この状態のときに株を公開すれば、創業者は、株価(売出し価格)と投下資本の差を利得として受け取ることができる。これが創業者利得である。それは、当該企業の利潤を市場の平均利子率によって資本に還元した額から、その企業に投下した資本を差し引くことによって求められ、次式のように示される。
創業者利得
=企業利潤÷平均利子率-企業利潤÷企業利潤率
たとえば、1株5万円、年1万円の配当をする会社があり、そのときの平均利子率が年6%であれば、その株の株価は16万6667円になる。この状態で株を公開すれば、1株当り11万6667円の創業者利得が生じる。創業者利得は、創業者の努力の対価である。ベンチャー・ビジネスは、創業者利得を目ざす企業といえよう。
[森本三男]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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