労しい(読み)イタワシイ

デジタル大辞泉 「労しい」の意味・読み・例文・類語

いたわし・い〔いたはしい〕【労しい】

[形][文]いたは・し[シク]《いたわりたくなる状態である、の意》
気の毒で同情しないではいられない。不憫ふびんである。「―・い身の上
気苦労である。気づかわしい。
「願はくは、大王おほきみ―・しといふとも、なほ天皇位あまつひつぎしろしめせ」〈允恭紀〉
大切に思っている。いたわって大事にしたい。
「かれもこれも―・しくて、いづれも思しめし煩はれき」〈平家・八〉
病気苦しい
我が身も、すこしありしよりは―・しくなりたるを」〈狭衣・一〉
[派生]いたわしげ[形動]いたわしさ[名]
[類語]気の毒可哀相かわいそう哀れ哀れむ不憫ふびん痛痛しい痛ましい思いやる思うおもんぱかいとおしむほだされる忍びない見るに忍びない見るに堪えない身につまされる

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「労しい」の意味・読み・例文・類語

いたわし・いいたはしい【労・痛】

  1. 〘 形容詞口語形活用 〙
    [ 文語形 ]いたは〘 形容詞シク活用 〙
  2. (困難なことで)骨がおれて苦しい。(重大なことで)心配だ。気苦労だ。きづかわしい。
    1. [初出の実例]「願はくは、大王(おほきみ)(イタハシ)と雖も猶天皇位(あまつひつぎ)(しろしめ)せ」(出典:日本書紀(720)允恭即位前(図書寮本訓))
  3. 病気で苦しい。気分が悪くて悩ましい。
    1. [初出の実例]「己(おの)が身し 伊多波斯計礼(イタハシケレ)ば 玉桙(たまほこ)の 道の隈廻(くまみ)に 草手折り 柴取り敷きて 床じもの うち臥(こ)い伏して」(出典:万葉集(8C後)五・八八六)
  4. 大事なものとして重んじたい。いたわって大切にしたい。
    1. [初出の実例]「とゐ波の 塞(ささ)ふる道を 誰が心 労(いたはし)とかも 直(ただ)渡りけむ」(出典:万葉集(8C後)一三・三三三五)
    2. 「我が身ながらこれに似たらむは、いみじういたはしうおぼえ給ふ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)紅葉賀)
  5. (他人の状態に対して)心が痛む。あわれみを感じる。気の毒である。ふびんである。いたいたしい。
    1. [初出の実例]「御台(みだい)の御事は〈略〉何の御痛敷(イタハシキ)事か候べき」(出典:太平記(14C後)九)
    2. 「去ながらあまり見る目もいたはしし」(出典:浄瑠璃・源三位頼政(扇の芝)(1714頃)二)

労しいの派生語

いたわし‐が・る
  1. 〘 他動詞 ラ行五(四) 〙

労しいの派生語

いたわし‐げ
  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙

労しいの派生語

いたわし‐さ
  1. 〘 名詞 〙

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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